榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

英雄、豪傑、武将、盗賊たちが勢揃いの浮世絵集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1739)】

【amazon 『浮世絵でみる!英雄豪傑図鑑』 カスタマーレビュー 2020年1月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(1739)

地元の3つの図書館を回りました。図書館の入口近くで、手作りのかわいい女の子たちが迎えてくれます。

閑話休題、『浮世絵でみる!英雄豪傑図鑑』(中右瑛著、パイ インターナショナル)は、浮世絵の武者絵が満載です。「浮世絵の武者絵には、強き者、美しき者たちへの憧れ、英雄崇拝のこころなど、乱世に生きる男のロマンが息づいている。伝奇ロマンの英雄、豪傑、戦乱時代の武将たちサムライが数多く登場する。・・・浮世絵は、史実、伝奇、読本、講談、歌舞伎芝居の世界を美しく具現化している。ショッキングで奇想天外な発想、強烈なフォルム、カラフルな色彩美、ドラマチックな冒険ロマンの劇画の世界が広がる」。

いずれの作品も迫力十分だが、私の独断で選んだベスト7は、以下のとおりです。

第1位は、歌川国芳の「児雷也豪傑譚」(1852年)。「妖術で大蝦蟇を出して操る児雷也と、宿敵大蛇丸の決闘」場面だが、画面いっぱいに描かれた巨大な蝦蟇の粘つくような気味悪さ。

第2位は、歌川国芳の「通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達」(1827年)。「『水滸伝』の登場人物。史進は九龍の彫物があったことから、九紋龍と呼ばれる」のだが、その入れ墨が半端ではないのです。全身隙間無くびっしりと龍が彫り込まれているので、見ているこちらが息苦しさを感じるほどです。

第3位は、歌川国芳の「真田与市能久 俣野五郎景久」(1849~1851年頃)。「真田能久は、頼朝挙兵後初の合戦である石橋山の戦いで先陣を命じられ、勇戦した若武者。平家方の俣野景久に出会い、組打ちとなった」。必死に戦う二人の形相の激しさ。思わず、私まで拳に力が入ってしまいます。

第4位は、月岡芳年の「演劇改良 吉野拾遺四條縄手 楠正行討死之図」(1886年)。「矢が体中に突き刺さった正行」。次から次へと飛んでくる矢の唸りが聞こえてきそうです。

第5位は、歌川国芳の「忠臣蔵十一段目両国橋勢揃図」(1827年)。「義士たちは討ち入りの夜、揃いの火事衣装を着て、江戸本所松坂町にある吉良邸近くの両国橋東詰に集結した」。橋のこちら側に集結した義士たちで立錐の余地もありません。

第6位は、豊原国周の「歌舞伎十八番之内 暫 市川團十郎」(1895年)。「主人公の車鬢に筋隈、素襖に太い襷といういでたちの華やかな様式美と、連と呼ばれる長い台詞の雄弁さが見所となっている」。これぞ、歌舞伎の極致だ。

第7位は、月岡芳年の「月百姿 信仰の三日月 幸盛」(1886年)。忠義を貫いた山中鹿之助の意志の強さが伝わってくる、惚れ惚れとするような立ち姿。