榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本は、隣の大国を徹底的に利用する1/10国家=クオリティ国家を目指せ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1801)】

【amazon 『大前研一 2020年の世界』 カスタマーレビュー 2020年3月20日】 情熱的読書人間のないしょ話(1801)

ミツバツツジが桃色の花をまとっています。ツツジとシャクナゲの交配種であるヨシノツツジが濃桃色の花を咲かせています。ヴィバーナム・ティヌス(トキワガマズミ)が小さな白い花を付けています。ネモフィラの水色の花が目を惹きます。因みに、本日の歩数は10,627でした。

閑話休題、『大前研一 2020年の世界――「分断」から「連帯」へ』(大前研一監修、good.book編、masterpeace)では、目まぐるしく変化する世界情勢を踏まえて、日本はどうすればよいのかが、明快に示されています。

世界情勢は、このように要約されています。「世界経済の動向=総じて下向き、巨大な富の創出が困難な時代に」、「世界情勢の動向=加速する自国第一主義とポピュリズム、世界は分断へ」、「21世紀の世界のあるべき姿=対立と分断が進む中、連帯と協調の道を模索すべし」。

では、日本はどうすればよいのでしょうか。「日本の動向=長期政権下で『静かなる死』へ。クオリティ国家への転換を目指せ」と強調しています。

「日本は美しく衰退している、この美しくというところが非常に特徴的です。なぜ失業が少ないのか、それは安い給料をみんなで分けているからです。民間平均給与は1997年に467万円だったのが、2019年では441万円。米国、EU、日本の中で給料がこの20年で倍になってない国は日本だけです。日本の場合それどころか下がっています。そして賃金が上がらないために物価の低迷を招いています。・・・国家の衰退=静かなる死ということで、国および地方の長期債務が1122兆円、債務残高が耐GDP比で237.5パーセント。これは未来に全部しわ寄せが来るのですが、国家債務のほうにどんどんしわ寄せをもっていって『税部戦線異状なし』と平気な顔をしています」。

「この静かなる死の元凶は何かということを考えると非常にはっきりすることがあります。日本の購買力平価に目を向けてみると、実勢相場がどんどん下落しています。ここからは、円安のほうがよいという考え方が変わっていないことが分かります。すなわち貿易立国時代の我々の考え方です。そのため円高になるとみなパニックを起こすのです。悪い癖です。経団連の会長にも貿易型の会社の出身が多くこの思考から脱却できていません。日本は輸入と輸出の均衡がおおよそとれています。こういう状況下では若干円高になっても円安になっても経済は影響を受けないのですが、そのことが分かっていないのです。『円安よし、円高怖い』というこのメンタリティがいつまでも根強く残っています」。

「実は日本は個人金融資産が非常に大きな成熟国です。日本全体の個人金融資産は約1800兆円、1人当たり約1800万円もあるのです。こういう国は購買力をつけたほうが絶対に生活水準が上がります。・・・日本の最大の問題は、資産豊かな成熟国でありながら、持っている資産の購買力を高めていないことです。日本人はずっと貿易思考で来たためにここのところを本当に理解するのは難しいと思います。今はそういう時代ではありませんし、多くのものは部品を中国から輸入して加工したりしています。こういうことを全部勘案すると、通貨は強いほうが国民の購買力が上がるということが言えます」。

著者の結論は、「隣の大国(=中国)を徹底的に利用する1/10国家=クオリティ国家を目指せ」というものです。大前の言うクオリティ国家とは、経済規模が1/10でも、クオリティは大国に負けない国家を意味しています。「日本と中国のGDP比はまだ5倍です。これがそのうち10倍になります。これはチャンスなのです。10倍の経済規模の国家がこんな至近距離に、お隣にあるのです。日本はこれを食ってなんぼだというメンタリティにならないといけません。『この野郎』と敵対心を露わにしたり、あるいは怯んで尻尾を巻いていては駄目なのです。10分の1だけれども隣の大国をとことん利用する、これがクオリティ国家です」。この指摘には、目から鱗が落ちました。