榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

あなたは、今後とも必要とされる薬剤師か・・・【薬剤師のための読書論(6)】

【薬局新聞 2013年2月13日号】 薬剤師のための読書論(6)

残る薬剤師」「消える薬剤師』(藤田道男著、財界展望新社)は、薬剤師個人にとっても、中小薬局、調剤薬局チェーン、ドラッグストアなどの企業の責任者にとっても、まさに時宜を得た必読の一冊である。

オーヴァー・ストア、競争激化、処方箋調剤の伸び悩み、後継者難、厚労省による医薬分業の費用対効果の問題提起といった課題を抱えながらも、これまで比較的順調な歩みを続けてきた調剤薬局業界であるが、今や、重大な影響を及ぼしかねない環境変化(短期的には、調剤手順変更、レセプトの突合点検・縦覧点検、専門薬剤師制度、プライマリ・ケア薬剤師制度、マイナンバー<社会保障・税番号制度>など。中長期的には、欧米流のリーフィル<反復調剤>処方箋・テクニシャン<調剤助手>制度の導入など)に直面している。

では、今後、調剤薬局はどのような方向を目指すべきか。門前薬局を中心とした特定医療機関依存型から地域依存型への転換、処方箋調剤にとどまらない、地域におけるプライマリ・ケアの役割分担、在宅医療・施設療養患者のニーズ掘り起こし、ヴァイタルサイン・チェック活動、日本版CDTM(共同薬物治療管理)――などについて、対応策が具体的に示されている。

薬局には、病院や診療所などの医療機関にはない優れた点――予約が要らない、気軽に入っていける、相談は無料、開店時間が長い、すぐに薬剤師に会える――があることを再認識すべきだろう。

薬剤師に求められるのは、専門知識+コミュニケーション・スキル+ヒューマン(人間性)・スキルだと、著者が強調している。近い将来、薬局数が減少する時代、目下は薬剤師不足であるが、毎年1万人超の新卒薬剤師が輩出される薬剤師過剰時代が到来したとき、生活者から必要とされる薬剤師でなければ生き残れないというのだ。