榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

現生人類の直系祖先探しは難しくなっているという見解・・・【続・独りよがりの読書論(22)】

【amazon 「日経サイエンス2014年12月号」 カスタマーレビュー 2014年11月11日】 続・独りよがりの読書論(22)

人類進化の最新情報

日経サイエンス2014年12月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「特集 人類進化――今も続くドラマ」は、人類の進化に関心を抱く者にとって見逃せない最新情報が満載である。

「プロローグ:書き換えられた進化史」、「第1部:我々はどこから来たのか」、「第2部:我々はどこが違うか」、「第3部:我々はどこへ行くのか」から構成されており、第1部の「気候変動のインパクト」、「進化を加速したハンマー」、第2部の「一夫一妻になったわけ」、「助け合いのパワー」、「生まれながらの協力上手」、第3部の「ネット化された霊長類」、「まだまだ続く進化」の各章も興味深いが、私が一番衝撃を受けたのは、第1部の「直系祖先は誰だ? 枝の多い系統樹」(B.ウッド著、千葉啓恵翻訳協力)の章である。

人類の直系祖先

「私たちの祖先はホモ・サピエンスに至るまでほぼ一歩道で進化してきたと考えられてきた。アウストラロピテクスがホモ・エレクトスに、ホモ・エレクトスがネアンデルタール人に、ネアンデルタール人が現生人類になったという見方だ」が、「化石証拠と遺伝学的な解析から複数種のホミニン(チンパンジーやボノボよりもヒトに近い絶滅種と現生人類を含む分類で、ヒト族ともいう)が同時に存在していた時期が過去数百万年間で何度もあったことが明らかになり、現生人類の直系祖先を突き止めることは、ほんの20年前に考えられていた以上に難しくなっている」というのだ。

最新の研究成果を踏まえた、直系祖先探しが難しくなっているという著者の見解は傾聴に値するが、上記の従来の見方の「ネアンデルタール人が現生人類になった」という一節は、私の理解とは異なっている。20年前の見方は、「ホモ・エレクトス→古代型ホモ・サピエンス(旧人)→現代型ホモ・サピエンス(新人。現生人類。ホモ・サピエンス・サピエンス)という基本的な流れがあり、ネアンデルタール人は古代型ホモ・サピエンスから枝分かれした系統で、その子孫は絶滅し、現代型ホモ・サピエンスの代表者がクロマニヨン人である。従って、ネアンデルタール人は現生人類の直系祖先ではない」というものであったと、私は理解してきたが、私のほうが間違っているのだろうか。