第5の戦場・サイバー空間における戦慄が走る実態の最新リポート・・・【続・リーダーのための読書論(48)】
ICT音痴
ICTは、私の不得意分野である。スマートフォンもタブレット(多機能携帯端末)も電子書籍リーダーも持っていない。メールも原稿書きも調べものもNECの795gのラップトップ(ノート)・パソコン(LZ550/SSB)で間に合わせている。このようにICTに疎い私であるが、『見えない世界戦争――「サイバー戦」最新報告』(木村正人著、新潮新書)には驚かされた。
サイバー戦
インターネット人口は、現在の25億人から2020年には50億人へと倍増するという。「検索エンジン、ソーシャルメディア、クラウドなどの発展で、『ビッグデータ』はビジネスだけでなく、いつの間にか犯罪捜査やテロ対策にも活用されるようになった。米中枢同時テロやロンドン地下鉄・バス爆破テロが自国のイスラム系移民への疑念を深め、IT革命が無制限の市民監視プログラムを実現させた」。
「これに異議を唱える英紙ガーディアン、告発サイト『ウィキリークス』創設者ジュリアン・アサンジ、猛禽類のジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドは、NSA、GCHQが象徴する絶対権力に対して市民やメディアが監視塔の役割を果たす『逆パノプティコン社会』を目指しているように見える。世界の覇権を揺るがす国家機密とメディアの激突、『治安を守るのは俺たちだ』という情報コミュニケーションの自負、国家安全保障と人命、『報道の自由』と『安全保障』のジレンマに陥る既存メディア」。
「ウィキリークスに続くスノーデン・ファイルの衝撃で世界勢力図の変化は一段と加速するかもしれない。自由と民主主義の桎梏につながれた欧米は立ち止まらざるを得ないのに対し、国家統制を強める中国やロシアは野放図にサイバー能力を向上させることができるからだ」。
「サイバー空間での国家監視や情報活動、産業スパイはさらに激しさを増すだろう。その一方で、ジャーナリストも市民もそれに対抗できるインターネット上の『武器』を手にした。フリーの情報収集・分析ツールを使えばリアルタイムで世界の変化をつかみ、ソーシャルメディアを通じて世界に働きかけられる。匿名化ソフトや暗号化メールで国家監視を逃れることもできる。問題は、それをいかに活用するか、なのだ」。
最新リポート
本書では、「せめぎあう仮想と現実」、「軍産学民が一体化した中国の脅威」、「スノーデン事件に揺れる米英シギント同盟」、「終わりなきドラグネット合戦への警鐘」、「リアルを侵蝕するサイバー戦の前途」といった章を通じて、陸・海・空・宇宙空間に並ぶ「第5の戦場」、貴族・聖職者・中流・言論出版界以外の「第5階級」、立法・行政・司法・メディアに次ぐ「第5の権力」と呼ばれるに至ったサイバー空間と、その空間を巡るさまざまな活動が生々しくリポートされている。