憲法、基地、原発問題を考えるとき、誰もが読まねばならない本・・・【情熱の本箱(67)】
【ほんばこや 2015年1月11日号】
情熱の本箱(67)
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治著、集英社インターナショナル)は、戦後に出版された書籍の中で最も重要なものの一つと確信している。著者の主張に反対であろうと賛成であろうと、本書を読むことなく、現在の政治・社会の重要課題、とりわけ憲法、基地、原発問題を語ることは無謀と言われても仕方ないだろう。
私がこの本を重要と判断した根拠は、下記の3つが実証的に明らかにされているからである。
(1) 戦後日本のあり方を規定したのは米国であるが、当時の日本の吉田茂ら指導層のみならず、昭和天皇と近衛文麿らエスタブリッシュメントの動きも大きな影響を与えたこと。
(2) 日本国憲法は米国(GHQ)が作成したものであるが、九条の一項(戦争放棄)と二項(戦力および交戦権の放棄) は明確に分けて議論すべきであること。
(3) 基地問題や原発問題を解決するには、その根底に厳然と横たわっている論理・構造の正体、すなわち、本当の権力の所在を知らねばならないこと。
もう一つ、 著者が今上天皇と皇后に尊敬の念を持っていることを付記しておきたい。
これらを踏まえた上で、我々は何を目指せばよいのか。基地問題については、「フィリピン・モデル」を著者は念頭に置いているようだが、中国の膨張主義を考慮に入れると、いささか理想論過ぎるのではないか。熱意と実力のある著者のさらなる探究を期待したい。