榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

辛いときは、植物たちの生き方に学ぼう・・・【続・リーダーのための読書論(50)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2014年11月28日号】 続・リーダーのための読書論(50)

植物に学ぶ

気持ちがスーッとラクになる生きるヒント』(ポール・スミザー著、主婦と生活社)は、滅多にお目にかかれない種類の本である。なぜなら、悩んだり落ち込んだりしている人たちに、植物の健気な生き方に学べば慰めや励ましが得られるよと語りかけているからである。「今、悩みや不安をひとりで抱え込んで、つらい思いをしている人がたくさんいますね。心の冬を迎えている人が・・・。そんな人に、植物の生き方を知ってほしい、春を迎えてほしいと思い、まとめたのがこの本です」。

日本でナチュラル・ガーデンづくりに取り組んでいるポール・スミザーが、自分の気に入りの植物たちを例に引きながら、「渇いた人間関係を潤すヒント」「自信を失った心を癒やすヒント」「育てる喜びを思い出すヒント」「つらい状況に希望の光を当てるヒント」「未来への旅立ちを後押しするヒント」を列挙している。

頑張っている植物たち

「冬があるからこそ、春が来る――ルドベキア」の一節は、こんなふうである。「若くなくちゃ、魅力がない。そう考えている女性は多いはずです。だから、年齢を重ねることを異常に恐れたり、友達がどんどん結婚していく様子を見て、『私は○歳を過ぎたのに、まだ独身だわ。どうしよう!?』と焦ったり。男性の場合だと、『同期がみんな昇進しているのに、自分はまだ・・・』なんて、自分の歩みが遅いことを悩んでいる人、多いかもしれませんね。・・・どうしても悩んでしまうという人がいたら、ルドベキアという花の生き方を知ってほしいと思います。人はそれぞれ、自分の人生や時間を好きな速度で歩けばいいんだよと、そんな当たり前だけどシンプルなことを、私たちにあらためて教えてくれる植物ですから。・・・咲かない年のルドベキアは、開花時期にあえて、開花のためのエネルギーを体の中にギュッと蓄えたままでいる。そうして1年をすごし、翌年は倍の力を爆発させて、見たこともないような大きな花を、たくさん咲かせます。人間も同じように、輝き時は自分で決めていいのに、と私は思います。結婚も、就職や昇進も、自分にふさわしいタイミングがあって、それに率直に従えばいいんだ、と。他人とくらべても、意味はないんですから」。

「いつでも、一歩ずつ――カタクリ」では、「私は、たとえ状況が急変してもペースは変えない。焦らずにこれまでどおり、一歩ずつ確実に前へ進む道を選びます。そんな生き方を教えてくれたのが、野草のカタクリでした」と語る。「カタクリは、一見、ただじっと同じ場所で咲いては休んでを繰り返しているだけに見えるかもしれません。ところが、違うんです。なんとカタクリの群れは、静かに動いているんですよ。植物にとっての生きる目的、種を保存するために。1年に何cmかというわずかな距離ではありますが、群生の範囲を確実に広げているのです。・・・カタクリというのは必ず、花のあと、親株から数cm離れた場所に種を落とし、発芽の準備をするのです。今年は数cm外へ種を落とす。その翌年も翌々年も数cm外へ・・・というように」。