MRの魔法はどこで学べるのか・・・【MRのための読書論(47)】
大学生に一番人気の本
大学生協の調べによると、2008年に東大、京大で一番読まれた本は、『思考の整理学』(外山滋比古著、ちくま文庫)だという。この本がよく読まれているのは、卒業論文を書く際に、何をどう書けばよいのかと悩む学生たちにとって、何らかの指針やヒントが得られるからだろう。
著者の考え方は、グライダー人間と飛行機人間という譬えによく表れている。学校の生徒は、先生と教科書に引っ張られて勉強する。独力で知識を得るのではない。自力では飛び上がることができない。これがグライダー人間だ。優等生はグライダーとしては優秀なのであって、彼らが必ずしも社会で成功するとは限らない。では、自力飛行できる飛行機人間になるには、どうしたらよいのか。著者は、思考、知的活動を3つ――「既知のことを再認する」(A)、「未知のことを理解する」(B)、「全く新しい世界に挑戦する」(C)――に分類している。飛行機人間になるには、B、C、すなわち、読者が自分の想像力、直観力、知識などをその限界まで総動員し、遂には「自分の解釈」に至るような思考的読書、知的訓練が必要だと述べている。
また、「読書の必要を訴える声はしばしば耳にするけれども、多くそれは量的読書である」という著者の指摘に、全く同感である。世に喧伝されている、いわゆる「速読術」のほとんどは、読書としては本末転倒である。
何かを思いついたら、その場で、すぐに書き留めておけ。勉強し、知識を習得する一方で、不要になったものは処分し、整理せよ。記憶と再生は、この面では人間より遥かに優れているコンピューターに肩代わりさせて、コンピューターにはできない創造性、独創性が求められる仕事に集中せよ。これらのアドヴァイスは学生のみならず、ビジネスパースンにも十分に有効である。
MRに必須の魔法の本
『考え・書き・話す「3つ」の魔法――いつでも、だれでも、なんにでも使える!』(野口𠮷昭著、幻冬舎)は、MR活動をレヴェル・アップさせるのに有用な本である。著者は、小泉純一郎の貴乃花優勝時の「痛みに耐えてよく頑張った。感動した。おめでとう!」や、バラク・オバマの大統領選時の「Yes we can!」でも明らかなように、コミュニケーションは「3つ」がキー・ポイントだというのだ。
●最初の印象が決め手となる自己紹介の例――「私の長所は3つあります。①性格が明るい、②声が大きい、③粘り強い、の3つです。一方、私の短所は次の3つです。①反省しない、②考える前に話をする、③すぐ動く、つまり、私はいつも前を向いている、過去を振り返らない人間です!」と「3つ」を活用する。
●上司に問題点を報告する場合――「問題・原因・解決策」の3つを意識して、簡潔に報告する。
●会議における引き出しの例――自分の頭の中に引き出しを作り、相手の言うことをうまく整理していく。「大・中・小」、「過去・現在・未来」、「重要・まあ重要・あまり重要でない」など、それぞれ3つの引き出しを用意し、相手の話をその引き出しに投げ入れていく。この方法は、会議にとどまらず、人の話を聴くとき、情報を整理するとき、自分の考えをまとめるとき、文章を作成するときにも応用できる。これは、「モレなく・ダブリなく・考える」ための思考法ということができ、この3つの引き出しを意識していると、自然に仕事の質が上がってくる。また、実りあるディスカッションを目指す場合は、「目的・言葉の定義・着地点」の3つを念頭に置くことが必要となる。
●戦略・戦術を立案するときの「3つ」の例――「customer(顧客・市場)」、「competitor(競合)」、「company(自社)」の「3C」で考えを整理する。さらに、視点を変えて、「product(製品)」、「price(価格)」、「promotion(販売促進)」の「3P」で考えを整理する。これが上級編に進むと、この「3C」と「3P」を組み合わせた9つのマトリックスを作り、考えを練り上げていくことが可能となる。これを企画書にまとめ、上司にイエスと言わせるためには、「なぜこの企画書が必要なのか」、「企画の内容は何なのか」、「どのような実行プランがいいのか」の3つが不可欠となる。
常に「3つ」を意識しているうちに、「3つ」の魔法使いに変身している自分に気づくことだろう。
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