榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「成功する5%のMR」になる鉄則・・・【MRのための読書論(23)】

【Monthlyミクス 2007年11月号】 MRのための読者論(23)

M&A時代のMR

ある日、突然、肩叩きに遭ったら、あなたはどうするか。あるいは、早期退職の好条件を提示されたら、どうするか。製薬業界も再編が珍しくなくなった現在、MRも他人事では済まされない。『「伝説の社員」になれ!』(土井英司著、草思社)を読んだMRと、読まないで済ませたMRとでは、その対処法が大きく異なってくるだろう。

5%に入るMR

ある生命保険会社のトップ・セールスマンが、自分のノウハウを講演で披露した時、一人の聴講者が「あなたの大切なノウハウを実行するライヴァルが増えたら、困るのでは?」と質問した。「ノウハウを実行するのは聴講者の20%程度、さらに継続できるのは、その20%程度、すなわち全体の4~5%だろうから、脅威にはならない」と答えたそうだが、確かに、その場では講演に感心しても、実行する人、継続する人は数少ない。本を読んだ場合も、同じことが言える。そこで、著者は、「成功するには、この5%に入ればいい。すなわち、学んだことを実行し、それを習慣にしてしまえ」と檄を飛ばしている。

私のMR時代の経験では、読書や講演からだけでなく、上司、先輩、同僚、後輩の成功例・失敗例からも学ぶことが多かった。学んだことは、即、試してみて、これは自分に合っていると感じたアイディアは、自分の得意技とすべく時間をかけて磨き上げていったものである。また、自らさまざまなアイディア――●「先生の心にポイントが貯まる名刺」(残念ながら会えなかった先生への名刺に自分を印象づける一言を書き添える)、●「正直ランキング」(自分で作成した重要ドクターのランキングを示した上で、先生の現在の最重要課題を聞き出し、その課題解決に向けた全面的なサポートを宣言する。さらに翌日からのサポートぶりの監視役を依頼する)、●「1秒ディテーリング」(「先生の右手が頼りのセフメタゾン」といった短いキャッチ・フレーズを、いつでも、どこでも、繰り返し先生に囁く)、●「愛の定期便」(ロマンティックな詩などを小さなカードに手書きし、シリーズものとして毎月、先生に手渡す)、●「危ないリーフレット」(先生の不在時には、重要部分にマーカーで印をつけたリーフレットのサプライズを与える置き方を工夫する)、●「秘密の連絡箱」(忙しくてなかなか会えない先生とは、互いにやり取りするメモの秘密の置き場所を取り決めておく)、●「踊るMR」(第1例目を処方してくださった先生の前で、感謝の気持ちを込めて踊る)など――を編み出し、その有効性が担当得意先の実績向上という形で証明できた場合は、同僚や後輩にも試してみるよう勧めた。後輩が、私のアイディアに工夫を加えて、一段と進化したアイディアを返却してくれることもたびたびであった。こういうアイディアの共有が組織の一体感を強め、その組織全体のレベル・アップをもたらすのである。転職・起業という道もあるが、組織の中でイキイキと働き続けることは素晴らしい。

伝説のMR

本書の「伝説の社員」というのは、高い給料や地位に惑わされることなく、やりたい仕事に辿り着いて、イキイキと働き、人生を豊かにしている社員を意味している。遠慮することなく思い切り力を出し切り、気持ちよく働けるかどうかが、判断基準だ。「最後に勝つのは能力より『バカになれる情熱』」、「バカになれるほど惚れられる対象に出会ったら、自分を賭けてみる」、「失敗したら、それをまたデータにすればいい」といった言葉が、ひしひしと心に迫ってくる。

アマゾンのカリスマ・バイヤーとして、また、ベストセラー作家を輩出する凄腕の出版コンサルタントとしての成功の裏付けがあるだけに、読んでいるうちに、自分にもできるはずだという気持ちにさせられてしまう不思議な本だ。

読書するMR

成功読書術――ビジネスに生かす名著の読み方』(土井英司著、ゴマブックス)は、「読書するMR」を目指そうとする時、非常に参考になる。著者は、ビジネス(広い意味の)に関する古典的名著を読んで先人たちに学べ、とけしかけているが、全く同感である。