漢詩の世界に浸る愉しみ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(66)】
私たち夫婦の散策コースのあちこちで、モッコウバラの淡い黄色の小さな花が咲きこぼれています。ヒラドツツジも負けじと大輪の花を咲かせています。薄桃色の花の中心部分に紅を散らしているアケボノ(曙)という園芸品種は、ポッと頬を染めて恥じらう乙女の趣です。因みに、本日の歩数は12,581でした。
閑話休題、漢詩に浸りたい気分が続いているので、『NHK漢詩紀行(2)』(石川忠久監修、NHK取材グループ編、日本放送出版協会)を、書斎の書棚から引っ張り出しました。
杜甫が反乱軍に幽閉されている最中に作った「春望(しゅんぼう)」には、漢詩の魅力が詰まっています。
「国破山河在(国破れて山河在り) 城春草木深(城春にして草木<そうもく>深し) 感時花濺涙(時に感じては花にも涙を濺<そそ>ぎ) 恨別鳥驚心(別れを恨んでは鳥にも心を驚かす) 烽火連三月(烽火<ほうか> 三月<さんげつ>に連なり) 家書抵万金(家書<かしょ> 万金<ばんきん>に抵<あ>たる) 白頭掻更短(白頭掻けば更に短く) 渾欲不勝簪(渾<す>べて簪<しん>に勝<た>えざらんと欲す)」は、「国都長安の町は、賊軍のためにすっかり破壊され、あとには山と川が昔のままにある。荒れ果てた町にも春がやってきて、草や木が深々と生い茂った。この戦乱のなげかわしい時節を思うと、花を見ても涙が落ち、家族との別れを悲しんでは、鳥の声にも心が痛む。戦いののろしは三か月もの長い間続き、家族からの手紙はなかなか来ないので、万金にも値するほど貴重だ。たび重なる心痛のため、白髪はかけばかくほど短くなり、まったく冠をとめるピンもさせなくなりそうだ」と解説されています。
さらに、漢詩の深みにはまり、DVD-BOX『石川忠久の漢詩紀行100選(全10巻)』(石川忠久監修、山口直樹写真、NHKエンタープライズ)を見直す羽目に陥ってしまいました。
「愛唱名詩選」4巻、「名詩逍遥」3巻、「三国志のうた」1巻、「歴史の中の詩人たち」2巻で構成されていますが、映像が素晴らしい、江守徹、二代目中村吉右衛門の漢詩朗読が素晴らしい上に、中国語朗読も楽しむことができます。
やはり、漢詩の世界はいいなあと、つくづく思う私なのです。