榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

絵画と文章で辿る旧約聖書の世界・・・【情熱的読書人間のないしょ話(756)】

【amazon 『図説 聖書物語 旧約篇』 カスタマーレビュー 2017年5月16日】 情熱的読書人間のないしょ話(756)

散策中に、豪華絢爛な花を咲かせているシーラ・ペルヴィアナを見かけました。ハナビシソウの橙色の花が風に揺れています。珍しい、真っ白な花を付けたケマンソウ(タイツリソウ)を見つけました。因みに、本日の歩数は10,635でした。

閑話休題、新約聖書に比べて知ることの少ない旧約聖書の世界に触れるのに、『図説 聖書物語 旧約篇』(山形孝夫著、山形美加図版解説、河出書房新社・ふくろうの本)は恰好の一冊です。

旧約聖書の天地創造からイスラエル民族の興亡を経て、預言者イザヤの物語までが、絵画と文章で辿られています。「聖書は、確かに、文字に書かれた言語(エクリチュール)であった。だが、その長い歴史からすると、聖書は読まれるよりも、それぞれの民族のさまざまな言葉で物語として語られ、絵画として眺められ、彫刻として触れられることをとおして、人びとの心に浸透していったのだ。人びとは、仄ぐらい聖堂のゆらゆら揺れるろうそくの明かりの中で、アブラハムと出会い、ダヴィデを知り、バビロンの地の望郷の歌を聞き、預言者の神の国の幻想を目の前に見たのである。こうした仕方で、聖書物語はその生命を紡いできた」。

例えば、バベルの塔は、ピーテル・ブリューゲル(父)が描いた「バベルの塔」とともに、このように説明されています。「(ノアの)大洪水のあと、東方から移動してきた人びとは、シンアルの平野に住みつき、石のかわりにレンガを用い、漆喰のかわりにアスファルトを使って、天まで届く巨大な塔の建設を夢み、その大工事に着手した。・・・(怒った)神は、互いの言葉が通じないように人々を散り散りバラバラに全地に散らせた。人間は混乱し、巨大な都市の建設は放棄された。その都市の名がバベル(混乱)と呼ばれるのは、そのためである」。

ゴリアテと戦って勝ったダヴィデを描いたカラヴァッジョの「ゴリアテの首を手にするダヴィデ」は、「背景の闇の中からゴリアテの首とそれを掲げる若者が浮かび上がる。カラヴァッジョは、強烈な明暗の対比によって、主題のもつ美しさと凄惨さを引き立たせた」と解説されています。

クロード・ロランが描いた「シバの女王の乗船」は、私の好きな絵の一つです。「朝日のさす壮麗な港に停泊する女王の帆船。船着き場ではソロモン王への贈り物の積載作業が進行し、中景にはエルサレムに向け旅立とうとするシバの女王の姿も見える」。