自分の頭で考えることができるようになる方法とは・・・【あなたの人生が最高に輝く時(60)】
自分の頭で考える
『自分のアタマで考えよう――知識にだまされない思考の技術』(ちきりん著、ダイヤモンド社)は、自分の頭で考えるための方法論をまとめた本である。著者の発想、方法は常識に囚われないユニークなものばかりで、何度も目から鱗が落ちた。
知識と思考
「自分の頭で考える」とは、どういうことだろうか。「『知っていること』は、通常『知識』と呼ばれており、『情報に基づく思考の結果』とは異なるのです」。「知識とは『過去の事実の積み重ね』であり、思考とは、『未来に通用する論理の到達点』です。ちきりんは知識の重要性を否定しているわけではありません。知識と思考を異なるものとして認識しましょうと言っているのです」。「思考力のある人は、自分の専門分野においてさえ革新的で柔軟です。それは彼らが常にゼロから考えているからです。時代が変わり、世の中が変わり、新しい現象が出てきて新しい情報に触れたとき、過去の知識ではなく、目の前の情報から考えることができるかどうか。それが『考えることができる人』とできない人の分岐点です。もしくは、『時代の変化に気がつく人』と気がつかない人の違いともいえます」。著者は、「知識にだまされていない純粋な思考」を目指せと言っているのだ。
会議を重ねても、何も決まらないのはなぜだろうか。「十分すぎる情報があるのになぜなにも決まらないのでしょう? 理由は、『誰も考えていないから』です。みんな『情報を集めて分析する』作業に熱中しています。しかし意思決定のためには、『どうやって結論を出すべきなのか』を先に考えることが必要なのに、そのための思考を怠っているのです」。
「考える」とはインプットをアウトプットに変換することだと、著者が断言している。「『私は考えた』というのは、『私はあるインプットをもとに、なんらかの結論を出した。ある考えに至った』という意味です」。
「なぜ?」と「だからなんなの?」
著者が数字を見たときに考えることは、実にシンプルである。「情報を見たときにまず考えるべきことは、『なぜ?』と『だからなんなの?』のふたつです。特に数字の情報を見たときは必ずこのふたつを考えます。『なぜ?』とは、数字の背景を探る問いです。数字はなにかの現象や活動の結果なので、すべての数字には理由があります。・・・もうひとつの『だからなんなの?』は、『過去の結果がこの数字に表われているのだとしたら、次はなにが起こるのか? それにたいして自分はどうすべきなのか?』と、データの先を考える問いです」。著者がいつも心がけているのは、情報と思考のバランスが大事だということである。
縦と横で比べる
考えるために最も役立つ分析方法は何だろうか。「ちきりんは迷わず『比較すること』と答えるでしょう・・・比較には、『なにとなにを比較するのか?』(比較の対象)と、『どのような点について比較するのか?』(比較の項目)が必要です」。「『縦=時系列比較=歴史的な観点でものごとを見ること』と、『横=他者比較=国際的な視点でものごとを見ること』とのことですから、やはり比較といえばこの2種類を覚えておくべし、ということなのでしょう」。
判断基準はシンプルに
判断基準はシンプルが一番、婚活女子を見倣おうと、呼びかけている。「決められないのは選択肢が多すぎるからではありません。決められないのは、『判断基準が多すぎるから』なんです」。「こういったときに役に立つのが、『判断基準に優先順位をつける』という考え方です」。「多くの婚活女子は切羽詰まっているので、『顔も身長も収入も性格も家も財産も将来性も・・・』と多くの基準に固執したりはしません。そんなことをしていたらおいしい餌はすぐに他の魚に奪われてしまいます。目の前にいい餌が現われたらすぐさまそれをモノにできるように、彼女らは、『重視すべき判断基準』をふたつにまで絞り込み、そのふたつの基準だけで即座に判断ができるよう身構えています。そのふたつの基準とは、たとえば『経済力』と『相性』です。・・・経済力は『相手に求める条件』ですから、女性側ではコントロール不可能ですが、『相性』は女性側が歩み寄ることにより合わせることが可能です。このため『相性は悪いが経済力がある』候補者の方が『相性はいいが経済力はない』候補者より、理想である(2×2マトリクスの)右上のボックス、『相性もよく経済力もある』に移動できる可能性が高いのです。つまり彼女らは、『経済力よりは相性の方が、自分の努力で改善できる余地が大きい』という合理的な判断をしているわけです。別の言葉で言えば、このふたつの基準の中の優先順位も明確であるということでしょう」。この婚活女子に関する考察に秀逸である。判断基準を絞ることで、本質が浮かび上がるとまで言い切っている。
思考の棚
知識は「思考の棚」に整理することを勧めている。「ちきりんが考える『知識』と『思考』の最適な関係は、『知識を思考の棚に整理する』というものです。思考の棚の中に知識を整理して入れ込むことにより、個別の知識が意味をもってつながり、全体として異なる意味が見えてくることがあります。そういった『統合された知識から出てくる新たな意味』が、『洞察』と呼ばれるものとなります」。「重要なことは、それらの知識をそのままの形で頭の中に保存するのではなく、必ず『思考の棚』をつくり、その中に格納するということです。単純に『知識を保存する』=『記憶する』のではなく、知識を洞察につなげることのできるしくみとして『思考の棚』をつくる――これこそが『考える』ということなのです。・・・人は、「一度じっくり考えたこと」は知識よりも圧倒的に長く記憶に残せます。思考は知識より忘れにくいのです。だから『思考の枠組み』の中に知識を格納しておけば、長く忘れずにすむのです」。
「①知識は思考の棚の中に整理すること。②空いている棚に入るべき、まだ手に入っていない知識を常に意識すること。③それらの知識が手に入れば言えるようになることを、事前に考えておくこと。――これが、ちきりんが考える『知識と思考の、理想的なカンケイ』なのです」。