榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

虫たちの棲みかを覗くと、不思議な世界が見えてくる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(493)】

【amazon 『虫のすみか』 カスタマーレビュー 2016年8月21日】 情熱的読書人間のないしょ話(493)

心に残る反戦映画『サウンド・オブ・ミュージック』のモデルとなったトラップ・ファミリー合唱団のマリアと子供たちが、1945年、ニューヨークで撮影された写真です。

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閑話休題、『虫のすみか――生きざまは巣にあらわれる』(小松貴著、ベレ出版)では、大地に棲む、植物に棲む、珍奇な環境に棲む、さまざまな虫たちの棲みかが紹介されています。

大地に棲む昆虫の中で興味深いのは、キノコ栽培をするシロアリです。「中南米に見られるハキリアリの仲間は、アジアにはまったく生息していません。しかし、面白いことに、アジアにはこのハキリアリとまったく同じような生活様式をもっているシロアリが生息しています。なお、シロアリはアリではありません。アリはハチの仲間、シロアリはゴキブリに近縁な仲間です」。「(キノコシロアリ属やオオキノコシロアリ属の)シロアリは、ハキリアリ同様に、巣内にキノコ栽培に特化した菌園の部屋をいくつももっています。菌園は、シロアリ自身の排泄した糞のようなもの(擬糞)でできており、たくさんのヒダがあって、その表面に小さな白いキノコが無数に生えています。・・・(食べた木材の消化できないセルロースを)キノコに分解させ、それをまた食べることで栄養を再吸収するわけです」。

植物に棲む昆虫の中では、虫瘤(むしこぶ)を作る連中が目を引きます。ヨモギエボシタマバエ、ヨモギワタタマバエ、エノキカイガラキジラミ、ハコネナラタマバチ、モンゼンイスアブラムシなどが作る奇妙な形の虫瘤は、実にバラエティに富んでいます。

珍奇な環境に棲む昆虫は、いずれも驚くべき場所に棲み着いているのですが、鳥肌が立つのは、動物の体内に棲み着く輩です。「動物の体表ではなく、体内に寄生する恐るべきハエの仲間がいます。日本の郊外に生息しているヤドリトリキンバエは、幼虫時代に小鳥のヒナの体内に食い込んで吸血するハエです。・・・(幼虫は)ヒナの体表に食いついたうえで、取りついた皮膚の部位を陥没させ、次第に皮膚の中に食い込んでいきます。やがて幼虫の体はほぼ完全に皮膚の中へ埋もれていきますが、尻(腹部末端)は常に外気にさらした状態でいます。ここには呼吸のための穴が開いているため、塞ぐわけにはいきません」。シジュウカラの雛の背中に食い入ったヤドリトリキンバエの幼虫の写真には、心が震えてしまいました。