取り巻き12人の調査から明らかになったマリリン・モンローの死の真実・・・【情熱的読書人間のないしょ話(871)】
我が家の中庭の出っ張りの上で、歩き回ったり、うずくまったりしているキジバトの若鳥は、恐れる様子を見せず、2階の窓から覗いた私を円らな瞳で見上げています。電線に止まったハシブトガラスが羽の滴を振り落としています。
閑話休題、私は女優としてのマリリン・モンローが好きなだけでなく、彼女自身の人間性、気配り、行動にも惹かれています。そんな彼女が何で36歳という若さで死ななければならなかったのか、疑問に思ってきました。ユニークな手法を採用した評伝『マリリン・モンロー 最後の年』(セバスティアン・コション著、山口俊洋訳、中央公論新社)が、この疑問を解消してくれました。
本書では、マリリンを取り巻いていた12人――家政婦、メイク係、秘書、マッサージ師、会計係、演技コーチ、ヘア・ドレッサー、スタンドイン、助手、精神分析医、写真家、広報担当者――の視点から見たマリリンが立体的に再現されています。
私の疑問に対する回答は、広報担当者のパトリシア(パット)・ニューカムと精神分析医のラルフ・グリーンソンの証言から得られました。
マリリンの最期の数カ月間、広報担当者として常時、マリリンの傍らに詰めていたパットへの著者のインタヴューが雄弁に物語っています。「マリリンは眠れない夜が続き、憔悴していた。大量に服用していたバルビツールの量をさらに増やしても、彼女は眠ることができぬまま、明け方にぐったりした状態で起き出すのだった」。
「(パットは)マリリンのように医者に支配されているスターは一度も見たことがなかった。バルビツール睡眠薬に対するマリリンの依存は議論すべきことだったが、早々に釘を刺された。ある晩、(グリーンソンから協力を依頼されていた)エンゲルバーグが何度目かの処方箋を届けにふたたび立ち寄り、パットは彼が帰るのを待って言った。――『もう少し減らしたほうがいいんじゃ・・・』。それ以上言う時間はなかった。『私は眠りたいのよ!』、マリリンは問答無用という調子でさえぎった」。
「そうこうするうちに、ラルフ・グリーンソンがやって来た。マリリンはパットを残して精神分析医と寝室に閉じこもった。2時間後、医師が出てきて、パットに帰るように言った。彼によれば、マリリンは『取り乱して』いるとのことだった。パットは聞き入れ、家に帰った。彼女は、グリーンソンが本当に我慢ならなかった。・・・のちにパットは、あの日マリリンにもっと気を遣ってあげなかったことを後悔するだろう。ラルフ・グリーンソンに言われるがまま、それがマリリンの望みなのかどうか本人に確かめもせず、簡単にあの場を離れたことを悔やむだろう。彼がまたしても自分を遠ざけようとしているのではないかと、あのときパットは疑いもしなかったのだ。彼女は二度とマリリンに会うことはなかった」。
著者のグリーンソンに対する調査は、こう結ばれています。「マリリンは理解した。これまでラルフ・グリーンソンがどれほど自分を子供扱いし、友人たちから孤立させ、さらにひどいことには、個人的な関心のために自分を利用してきたかということを。彼女にはまた、グリーンソンと(マリリンに内緒で自分を売り込んで契約した)フォックス社との関係も聞こえてきていた。マリリンに必要なのは自分のひどい不安を治療してくれる人であって、自分のキャリアに関与する人ではなかった。マリリンが自分から逃げていくのを感じたグリーンソンは、・・・マリリンの家に駆けつけた」。