榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

もうすぐ80歳になる老婆の恋物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(329)】

【amazon 『黄昏流星群(44)』 カスタマーレビュー 2016年3月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(329)

私が20年に亘り、弘兼憲史のコミックス『黄昏流星群』シリーズの新刊が出るたびに購入してきたのには、一つの目論見が隠されています。これから先、馬齢を重ねて、文字がぎっしり詰まった本が読めなくなったら、『黄昏流星群』を繰り返し再読しようと考えているのです。きっと、私の大きな慰めとなってくれることでしょう。ですから、私と同世代の著者には、まだまだ未だ頑張って続巻を出し続けてほしいと願っています。

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コミックス『黄昏流星群(44)――オーロラ星空シンデレラ』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「3つ星ピッツェリア」は、もうすぐ80歳になる老婆の恋物語です。高齢者の恋はこうありたいものです。

資産家の未亡人・真矢里於子は、最近、恋をしたのです。相手は近所のイタリアン・レストランの若きイケメン店員・郡山です。

「亡くなった夫には悪いけど、私の人生の中で恋なんて言葉は存在しなかった。親の勧めで見合い結婚し・・・。経済的には何不自由のない生活をしていたけれど、殺伐とした50年を夫と二人で過ごしてきた。私に子供が出来なかったということもあるかも知れないけれど、夫は外に若い女性を作って子供を産ませて、そちらの家庭で1年のうち半分は暮らしていた。ところが夫が病に倒れると、その女は、お金だけもらって子供を連れて、夫の元から去っていった。残された夫はそのまま病院でチューブに繋がれて10年間ベッドで過ごし――。私が病院通いにいい加減うんざりしていた頃、逝ってくれた・・・。5年前だった」。

「私は毎日、彼の横顔を眺めるだけで満足する」。「12時を過ぎると、この店は客でいっぱいになる。そうなったら彼は、私だけのものではなくなるので、私は帰ることにしている」。

ところが、その後、思わぬ展開が・・・。