榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

君なら地位と財産を選ぶか、それとも、愛と貧乏と充実した日々を選ぶか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(334)】

【amazon 『黄昏流星群(25)』 カスタマーレビュー 2016年3月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(334)

散策中に、ユキヤナギの真っ白な行列に出会いました。シデコブシが淡い桃色の花を咲かせています。白色のコブシとは雰囲気が少し異なります。畑のど真ん中に風情のある小さな稲荷が佇んでいます。因みに、本日の歩数は10,589でした。

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閑話休題、この20年間、新刊が出るたびに購入してきたコミックス『黄昏流星群』シリーズの第51巻から遡って第25巻までを、この数日間で一気に再読しました。『黄昏流星群(25)――煌めかざる星』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「煌めかざる星」の主人公の歌川哲彦、49歳は、地方都市の市長です。

中学、高校時代を過ごした土地の居酒屋で、パートで働いている村井香織に偶然、30年ぶりに出会います。彼女は高校の同級生で、かつて互いに好意を持っていた間柄です。

翌朝、香織は酒乱で暴行を繰り返す夫を殺した疑いで逮捕されてしまいますが、午前2時まで歌川とホテルで過ごしたことを、警察に話そうとしません。歌川の立場を気遣ってのことです。

それを知った歌川は、香織のアリバイの証人として警察に赴き、市長を辞任します。

地元の資産家の娘で、秘書と不倫している妻と離婚した歌川は、香織と新しい土地を探す旅に出ます。このラスト・シーンの二人の会話が、実にいいのです。「ねえ・・・。後悔していない?」、「何を?」、「今まであなたが50年かけて築き上げてきたものを、すべて失ったのよ」、「ハハハ、そんなことは何とも思っていないさ。栄光と挫折は人の生涯の中で必ず訪れてくる。それがセットになって人生なんだ。だから人生は面白い」、「そうね、その通りだわ」、「俺は、地位と財産と空虚な日々を失ったけど・・・」、「うん?」、「愛と貧乏と、充実した時間を手に入れることが出来た」、「もうひとつあるでしょう?」、「何だ?」、「欲情する気持ち」、「そうだな、それがいちばん大切かもしれない」。

『黄昏流星群』シリーズに通底する弘兼の人生、そして愛に対する基本姿勢が明快に描き出されている一篇です。