榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

在日コリアンの韓国に対する「諫言」と、日本の外交戦略への提言・・・【情熱的読書人間のないしょ話(872)】

【amazon 『在日の涙』 カスタマーレビュー 2017年9月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(872)

散策中に、鮮やかな赤橙色の花を咲かせているチトニア(メキシコヒマワリ)を見かけました。ノカンゾウが橙色の花を付けています。薄紫色の花が可憐なノハラアザミは、葉に刺があります。ヒルガオ、アサガオも未だ頑張っています。因みに、本日の歩数は10,892でした。

閑話休題、『在日の涙――間違いだらけの日韓関係』(辺真一(ピョン・ジンイル)著、飛鳥新社)には、在日韓国・朝鮮人の著者だからこそ書ける内容が詰まっています。

「在日の祖国離れが進んでいることは、帰化者の数が増えていることに表れている。1991年に69万人と戦後のピークを記録した在日韓国・朝鮮人の数は、1995年くらいから毎年減り続け、20年ほどで50万人を割り込んだ。95年から05年にかけては、毎年約1万人もの帰化者が記録されている。このまま行けば、2050年までには在日がほぼ存在しなくなるとの試算もある」。

「私は仕事柄、日韓両国に対する中立的・建設的批判のスタンスを堅持しようと努力してきた。それは変えるつもりはないが、正直なところ、もう韓国・北朝鮮へのこだわりはない、という気持ちが徐々に強くなってきている。その理由は、北にも南にも、いい加減にあきれ返ってしまったという、失望と落胆の気持ちが大きい」。

「私は韓国と北朝鮮を『一卵性双生児』と呼ぶことにやぶさかではない。発想、性格、気質が同じなのだ」。

「(日韓の)関係が悪化してしまった原因を冷静に振り返れば、歴史にあまりにもこだわり過ぎる韓国による日本否定に、行き過ぎがあったことは否めない。韓国が反日国家の度合いを深めていくほど、在日コリアンの日本定住と帰化は進行して、いつの日か祖国に帰り、国家建設に協力するという『仮の宿』論は名実ともに過去のものとなった。しかし、日本ではそうした現実が表立って報道されることはほとんどない」。

「日本で生まれ、日本の水で育った在日コリアンとして、日本人よりも韓国人を、韓国人よりも日本人を深く知っている私の立場から、近年の日韓関係のどこが間違っていたのか、問い直してみたい。私なりの立場で、日本の言論空間で韓国の間違いを、日本の誤解を正さなければならないと思うようになった」。著者は、本書を、著者が初めて公刊する「祖国・韓国への諫言」と位置づけているのです。

韓国に対する著者の「諫言」は直截で興味深いのですが、私が注目したのは、韓国、北朝鮮に中国、ロシアを加えた東アジア情勢全体から、これからの日本の外交的選択について述べている部分です。●「私は中国が北朝鮮を、(中国)東北部の一省扱いにしたいのではないかと見ている。だからこそ、今の日朝関係や南北関係を維持することが中国にとって望ましい」、●「韓国も北朝鮮も大きいものに巻かれてしまい、大国をバックにライバルを圧倒しようとする事大主義を見透かされた中国に、手玉に取られているのである」、●「北朝鮮が中国に経済的に従属していけば、政治・外交、軍事的にも隷属化され、中国の前線基地として要塞化されかねない」という独自の分析を踏まえて、●「日本は北朝鮮を引き寄せるべきだというのが私の持論だ。国交を結んでいない北朝鮮が接近してくることを、日本は国交を結んでも今なお反日を叫ぶ、韓国(と中国)へのカウンターとして使える。北との交渉は、日朝韓の関係を再構築するいい機会になるだろう。北朝鮮のような『伝統的な』反日国家を少しでも親日にしていくことが、日本の国益に合致すると私は一貫して主張している。夢のような話に聞こえるかもしれないが、できないことはない」と提言しているではありませんか。日本は、韓国、中国に対する北朝鮮カードをもっと巧みに使えというのです。

私自身は、著者の提言を頭に入れた上で、直近の北朝鮮の相次ぐミサイル発射実験、核実験と、ロシアの立ち位置、企みを考慮に入れて日本の戦略を練る必要があると考えています。