人間五十年、化天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり・・・【ことばのオアシス(8)】
【薬事日報 2009年7月29日号】
ことばのオアシス(8)
人間五十年、化天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり
――幸若舞「敦盛」
人間五十年、化天(げてん)の内をくらぶれば、夢幻(ゆめまぼろし)のごとくなり。一度(ひとたび)生(しょう)を受け滅せぬ者の有るべきか。
織田信長が好んで舞った幸若舞の「敦盛」(能の「敦盛」ではない)は、平家の若武者・平敦盛(清盛の甥)が源氏の武将・熊谷直実に潔く首を討たれた悲劇を題材としている。「人の世は儚い。だからこそ、思う存分生き抜くべきだ」という信長の人生観にフィットしたのだと思う。強大な敵・今川義元との桶狭間の戦いに出陣する際に、信長が「敦盛」を舞ったと「信長公記(しんちょうこうき)」が伝えているが、「化天」は「下天」と書かれている。
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