榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本国債暴落(=ハイパーインフレ)は十分あり得る、その対策とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(881)】

【amazon 『武器としての経済学』 カスタマーレビュー 2017年9月14日】 情熱的読書人間のないしょ話(881)

小学2年生34名を対象とした読み聞かせヴォランティアで、『バスをおりたら・・・』を読みました。教室に「友だちの良いところをみつけよう」という標語が貼られています。廊下の昆虫飼育ケースでは、スズムシたちが盛んに鳴いています。2年生の「人をたべるかわいいグアナコ」というシュールな粘土細工には驚かされました。因みに、本日の歩数は10,273でした。

閑話休題、『武器としての経済学』(大前研一著、小学館)を読めば、「武器としての経済学」が身に付くという著者の主張は、決して誇大広告ではありません。

為替、物価、株式、金融政策、不動産市況、年金、チャイナ・リスクなど25のテーマについて、大前流の新たな視点と問題の読み解き方が提示されています。

例えば、物価に関して、「日本は将来、インフレになるのか。それにどう備えるべきか?」という設問に対しては、こう解説されています。

「そもそも、黒田(東彦)総裁の『インフレ』の捉え方は間違っている。黒田総裁は、デフレから穏やかなインフレへと期待を変えて、消費や投資を促し需要の拡大につなげる、と繰り返し述べている。ベン・バーナンキ前FRB議長やポール・クルーグマンNY市立大学教授の受け売りではないかと思うが、インフレ期待――近い将来、モノの値段が上がるのだから、上がらないうちにモノを買ったり、投資したりするはずだ、という理屈である。だから金利を下げて市場にマネーを投入すれば景気が良くなると考えているらしいのだが、この21世紀に100年前のカビ臭い理論を持ち出してきたことに驚く。仮に黒田総裁の言うように『インフレへの動き』が出てきたとしよう。だが、今の日本人に、前倒ししてまで買いたいモノがあるだろうか?」。直截な物言いをする大前らしく、辛辣です。

続いて、恐ろしいことが書かれています。「日本でインフレが起きるとしたら、日本国債が暴落した時である。しかも、その場合はハイパーインフレだ。ほとんどの国民は『ハイパーインフレなんて、日本では起きないだろう』と思っているが、悲劇はある日、突然やってくる」。

「日本でハイパーインフレが起きたらどうなるか? 経済が大混乱に陥るのは当然だが、最も困るのは年金受給者である。受給額はそのままでも、年金の価値は激減してしまうからだ。政府は『年金は物価に連動させる』と言っているが、そんな約束はあっという間に反故にされるだろう」。

そうなると困る人は、他にもいます。「金融資産を銀行に預けている人も危険だ。ハイパーインフレになれば国債が暴落し、国債をたんまり買い込んでいる銀行は破綻する。預貯金は消えてなくなる。生命保険や信託なども同様である。タンス預金も無価値になる」。

「日本でハイパーインフレを望んでいる人がいるとしたら、それは財務省の役人だろう。インフレ率10倍ならば、貨幣価値は10分の1になるということだ。つまり、1000兆円を超えている国の借金は、一気に100兆円相当になる。インフレ率100倍ならば10兆円だ。つまり、自然に国の借金を減らすことができる」。

さらに、著者は危険極まりない予測に言及しています。「市場が『日本の財政は綱渡りだ』と認定すれば、日本国債は即座に暴落する」。影響力のある人間が、こういう見解をSNSで発信したら、日本国債はたちまち暴落してしまうというのです。

それでは、私たちがハイパーインフレに備えることは可能なのでしょうか。その回答として、著者は、①資源国の通貨によるタンス預金、②資産を『金(ゴールド)』または『金に準ずるコモディティ(商品)』に換える、③『稼ぐ力』を身に付ける(=自分への投資)――の3つを挙げています。私は、①の応用として、できるだけ長期の米国債をドルで購入することがベストな対策と考えています。