現在の日本に対する赤川次郎の危機感・・・【情熱的読書人間のないしょ話(58)】
散策していたら、竹林で筍たちが日向ぼっこをしていました。大きくなった筍は食べられないのよ、という女房の一言に、食べること専門の私は頷くよりありませんでした。因みに、本日の歩数は10,098でした。
閑話休題、エッセイ集『三毛猫ホームズの遠眼鏡』(赤川次郎著、岩波現代文庫)を読んで、その硬骨ぶりに感服してしまいました。赤川次郎は570冊の本を出してきた自称「エンタテインメント作家」ですが、そんじょそこらの流行作家とは大違いです。
「30回のこの連載期間中、日本の社会は戦後最も恐ろしいペースで痛み続けて来た。原発事故、子供の貧困、大企業優遇の税制、特定秘密保護法、武器輸出・・・。民主的な社会を根本から揺がすような状況がこれだけ重なっても、なお自民党政権を支持する人々は根強く存在する。この流れが行き着く先を考えようとしない、想像力の欠如」、「世界への窓を開け、外の空気を入れるべきジャーナリズムやマスコミが機能不全に陥っている。原発のメルトダウンという最悪の事故を起した国が、その収束の見通しも立たないまま、オリンピックを開き、リニア新幹線を走らせようとする」と、舌鋒鋭く告発しています。
「文学というものは、死体をバラバラにするような猟奇事件よりは、生活保護を申請に来た貧しい母親を『まだ働ける』と追い返す行政の方にこそ、さらに深い残酷さを見るものではないのか」。
「ごく簡単な一つの問い。『あなたは子供たちを愛していますか?』。たったそれだけの問いを、今の社会へ投げかけたい。愛する子供たちが、放射能によって何年か何十年か後に甲状腺のガンを発症しないか。子供が毎日の食事も満足にとれないような世の中にならないか。若者たちが、まともな仕事につけず、将来に希望も持てず、アメリカのための戦争に駆り出されていくのではないか。――一つ一つ、数え上げればきりがない。『子供たちに、安心して生きられる日本を残したい』。そう思うなら、自ずとなすべきことは見えてくるはずだ」。
現在の日本に対する著者の危機感がひしひしと伝わってきます。