榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

習近平は対外強硬路線からの方向転換を図っているという分析・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1019)】

【amazon 『強硬外交を反省する中国』 カスタマーレビュー 2018年2月6日】 情熱的読書人間のないしょ話(1019)

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閑話休題、『強硬外交を反省する中国』(宮本雄二著、PHP新書)では、習近平をよく知る元中国大使の著者が、中国の現状を分析し、今後を予測しています。

「中国外交は『力による現状変更』を試み、国際規範を弱体化させた」、「南シナ海問題でASEANの心は離反し、中国は外交的利益を損なった」、「中国外交は米国の対中認識を変え、戦略的利益を失った」、「中国は『中国の風格』を失った」――というのが、著者の現状認識です。

著者は、習近平は対外強硬路線からの方向転換を図っていると見ています。「習近平が『中国の夢』を強調したのは、中国の将来の夢を指し示し、その実現のために中国共産党の指導が必要であり、共産党が政権を担い続ける必要があることを国民に示すためだと思われる。これは、中国共産党にとって最も深刻な課題である『統治の正当性』を担保するために必要となる、いくつかの方向転換をしたことを意味する。一つ目は歴史観の転換である。これまでの『被害者の歴史観』から『勝者の歴史観』に変わった――私は、そう判断している。・・・それは自動的に二つ目の転換に導く。共産党の統治の正当性を過去の歴史ではなく、これまでの実績とこれから達成する成果に置くということだ。歴史を強調しても世代交代を経た中国社会はついてこない。そうではなく、今日の生活水準の向上をもたらし、将来も素晴らしい中国をつくることを約束している共産党こそが、政権を担う資格があるということを言えば良い。そのような未来を国民が欲するのならば、共産党が統治し続けないと実現できませんよ、という言い方に変えたのだ。だから『中国の夢』は重要になる。『二つの百年の奮闘目標』に代表される『中国の夢』が、共産党の公約であり、だから共産党は『中国国民のために』統治を続けなければならないのだ」。

「客観的に見て、現在の中国に必要なのは、何をおいても、経済の持続的成長だ」というのです。

著者は、中国は対北朝鮮政策も転換しつつあると見ています。

中国の時代は本当に来るのだろうかという問いに、著者はこう答えています。「おそらく、そう簡単に中国の時代は来ないであろう。中国はますます存在感を強め、一層、重要な役割を果たすようになることは間違いない。だが、あくまでも世界ファミリーの重要な一員として役割を果たすのであり、その統括者としてではない」。