榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

イリオモテヤマネコの生態と表情に鋭く迫った写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1091)】

【amazon 『奇跡の島・西表島の動物たち』 カスタマーレビュー 2018年4月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(1091)

シーラ・ペルヴィアナが青色系の豪華絢爛な花を広げています。ヤグルマギクが濃紫色の花を付けています。ボタンの赤紫色の花は貫禄があります。イベリス・センペルビレンス(トキワナズナ)が白い花を咲かせています。シンワスレナグサが小さな水色の花をまとっています。ジャーマンアイリスの花と萼は、色合いがヴァラエティに富んでいます。ユリノキが天に向かって伸びています。因みに、本日の歩数は10,296でした。

閑話休題、写真集『奇跡の島・西表島の動物たち――イリオモテヤマネコとその仲間たちの知られざる生態』(鈴木直樹著、森本孝房協力、誠文堂新光社)では、これまで知らなかったイリオモテヤマネコの生態や表情に出会うことができます。

「イリオモテヤマネコの最大の不思議はその生息域の狭さである。東京23区の半分以下の面積であるこの西表島だけがこの種の生息域であるからである。かつてユーラシア大陸と地続きであった20万年前の時期に、ベンガルヤマネコの仲間がこの地域にやってきて、その後の海面上昇によって取り残され、固有亜種としてイリオモテヤマネコになったと考えられている」。西表島では、ヨーロッパや北米大陸に生息する大型ヤマネコ1頭のテリトリーの100分の1以下という狭さだというのです。

「イリオモテヤマネコは西表島が海により隔絶された後に、どのような行動学的進化を遂げたのだろうか。イリオモテヤマネコは大きな2つの進化を遂げたといえる。まず限られた面積のテリトリーの中で生息すること。そして限られた獲物で生き延びられるようにすることである」。

「イリオモテヤマネコはこの(水を怖がらないという)能力因子が功を奏してか、西表島のような水系で細かく分断された環境において、水を怖がらず、川も渡り、必要に応じては水に潜って獲物を取る能力をもったのだろう。そしてこれがイリオモテヤマネコを生き延びさせる鍵になった。また、イリオモテヤマネコは陸上の鳥や両生類、爬虫類、昆虫だけでなく積極的に水中の魚類やエビの仲間を狩る」。イリオモテヤマネコは、何と、水を怖がらないネコなのです。

数々の写真には、著者のイリオモテヤマネコに対する愛が迸っています。

「とうとうイリオモテヤマネコが川を泳いで渡りきる姿の撮影に成功した。星空の下、中型の川を対岸まで泳いで渡っている。島の(リュウキュウ)イノシシ猟師たちの『ヤマネコは川を渡るんだ』という言葉が画像というエビデンスで捉えられたのである」。

「イリオモテヤマネコがヤマネコらしい表情をする時がある、くるりと振り向いたオスの表情があまりにも精悍で驚かされることがある」。その目つきの厳しさは、迫力満点です。

「倒木の上を歩く個体、もはやヤマネコというより小型のトラのように見える」。

「ある夜、まだ若いイリオモテヤマネコに遭遇した。成体であれば人の気配だけですぐに森の中に消えてしまうところ、この若い個体は好奇心が勝って一向に逃げない。2メートルまで接近した時、私はその瞳の美しさにおもわず吸い込まれそうになった」。私も、危うく吸い込まれそうになりました。

西表島の森には、イリオモテヤマネコ以外にも、多くの動物たちが棲んでいます。リュウキュウイノシシ、ヤエヤマオオコウモリ、クマネズミ、カンムリワシ、リュウキュウコノハズク、アカショウビン、オサハシブトガラス、オオウナギなどの興味深い写真も収録されています。

忍耐強い観察力、決定的な一瞬が醸し出す迫力、画像の鮮明さと美しさにおいて、本書は類書を圧倒しています。