ジョン・F・ケネディは父の操り人形で、彼の女漁りは父親譲りだった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1208)】
散策中、ミンミンゼミ、アブラゼミ、羽化したばかりのニイニイゼミを見つけました。大きくて、色の濃いアブラゼミの抜け殻に比べると、ツクツクボウシの抜け殻は色が薄く、小さく、ほっそりしています。因みに、本日の歩数は10,908でした。
閑話休題、鼎談書評集『三人よれば楽しい読書』(井上ひさし・松山巖・井田真木子著、西田書店)では、ジョン・F・ケネディの父、ジョゼフ・P・ケネディの一代記『汝の父の罪――呪われたケネディ王朝』(ロナルド・ケスラー著、山崎淳訳、文藝春秋。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)について、こういう意見が交わされています。「●井上=権力と富と保身のために、いろんな人と駆け引きをしながら付き合いますね。・・・次から次へと人名が出てきて多少混乱しますが、その駆け引きの凄さには驚嘆します。●松山=ツヴァイクの『ジョゼフ・フーシェ』も権謀術数の凄まじさを描いてますが、ケテディはもっと身近だからショックですよ」。「●井上=こんなに圧倒されたのはもう何年ぶりだったか・・・。本当に凄まじい本でした」。私の愛読書『ジョゼフ・フーシェ』に匹敵する本、井上がこれほど圧倒された本を読まないで済ますわけにはいきません。
有り体に言えば、『汝の父の罪』はジョー(ジョゼフの愛称)・ケネディの一代記という形を借りた、彼の人間性にスポットライトを当てた告発本、暴露本です。
『ジョゼフ・フーシェ』の主人公、ジョゼフ・フーシェが与える印象とはかなり異なるが、『汝の父の罪』が凄まじい本であることは確かです。そして、私も激しいショックに襲われました。
ジョーが若い時から、目的のためには手段を選ばず、あらゆる駆け引きを駆使して、政治的、財政的な成功を収める過程も十分に眉を顰めさせるものだが、私にとって一番衝撃だったのは、私の敬愛するジョン・ケネディ大統領が父親の操り人形に過ぎなかったことと、ジョーを見倣い、次男のジョンも三男のロバートも女漁りに明け暮れたことです。恋多き男というなら許せる余地があるが、心の伴わない肉体だけが目当ての女漁りには、本当にがっかりしました。マリリン・モンローとジョン、ロバート兄弟との性的関係が取り沙汰されたのも、故なきことではなかったのです。
「ジョーの哲学は、力が正義となる、だった。この世で大切なのは、まず権力であり、そして勝つことだった」。
「(長女)ローズマリーの本当の病気は精神障害だった。明らかに、ジョーは、知的障害のほうが不体裁の度合いが低いと思ったのだ」。
「(ジョーに頼まれた)カークは(海軍に入隊した)ジャック(ジョンの愛称)を楽な仕事に配属した」。
「ジャックは依然としてジョーの支配下にいた」。
「ジャックは明らかに父親を称賛していた。とくに、女をものにする腕の達者さに感服していた」。
「『ジョー・ケネディは自分のために仕事をする者はみな奴隷だと考えていたんです。・・・相手に何の敬意も持っていなかったのです』」。
「このインタビューは、ジョーの反ユダヤ主義をはっきり立証していた」。
「『(相手が手強くて)ぶちのめすことができないときは、友達になる、それが彼(ジョー)の流儀だったんです』」。
「『ケネディ家の連中は権力のためにはだれでも平気で犠牲にする』」。
「戦争は何万というアメリカ人の英雄を生んだ。ジャックだけ(ほかの英雄と)違っていたのは、彼には戦争の手柄を利用して政治的優位を築く知恵と意欲とコネを持った父親がいたことである」。
「『(ジョーは)徹頭徹尾偽善で固めたんだ。権力が唯一の目的さ。規則の気に入らないゲームに勝つには、なにをどうすればいい?』。試みて失敗に終わったジョーは、自分は決して大統領にはなれないことがわかっていた。だが、息子たちは別だ。彼は息子たちによって、権力への渇きを癒そうとした」。
「ジャックが(党の候補を決める)予備選挙に確実に勝てるよう、ジョーはビル清掃作業員のジョゼフ・ルッソーにカネをやって立候補させた。このために、投票をする人は混乱し、すでに名簿に載っていた(対抗馬の)まともな政治家ジョゼフ・ルッソーの票が二つに割れた」。
「議員という公職についたジャックは、若い女性にいっそうもてだした。ジャックは女を父親にまわした。『ほとんど近親相姦に近い雰囲気』がケネディ家にみなぎった、とジャックの側近で女を手に入れるのを手伝ったラングドン・マービンは言う。『私の言う意味はケネディ家の男たちは共有の品物のように女を互いにまわし合い、恋人を奪い合い、ベースボール・カードのように交換しあったということだ』」。
「ジャックは、いまだ父親の支配下にある、『こどな(こども大人)』だった」。
「こうした漁色三昧にもかかわらず、ジョーはビジネスのほうにもぬかりがなかった」。
「父を真似て、ジャックは女遊びのほうはそのままで、ジャッキー(ジャクリーン・リー・ブービエの愛称)に求婚している間もほかの女たちとデートしていた」。
「結婚したあとも、いろんな女とセックスしたいというジャックの欲望に翳りはこなかった。パーティで女を拾い、ジャッキーをほったらかして消えた。キャロル・アームズにアパートを借り、そこで同時に2人の秘書と寝るなど『グループ・セックス』に耽った、と友人のジョージ・スマザーズ議員は言っている」。
「『ジャック・ケネディは・・・私の知るかぎり、ゴースト・ライターに書かせた本(『勇気ある人々』)でピュリッツァー賞をもらった史上唯一人の男だ』」。
「『(ケネディ)大統領の生涯の決定的に重要な場面では、ジョーの判断がみなを説き伏せた・・・すべての重要な決定の際、ジャックは父親に電話をするのが常だった。父のアドバイスを非常に重要視していたのだ』」。
「『ジャックはジョーが望むことをした』とジャックの友人ジュージ・スマザーズ上院議員は言う。大統領になることもそれだった」。
「ジョーは言った。『おまえに言っておくが、弟のボビー(ロバートの愛称)はおまえのために本当に一所懸命やったんだ。あれはおまえに生き血を捧げたんだ。おまえはそのことを知っているし、私も知っている。神かけて、あれは合衆国司法長官に当然なっていいんだ。神かけて、あれは司法長官になる。わかったかな?』。ジャックは答えた。『はい、お父さん』。そんなわけで、ボビーは司法長官になったんだ』とスマザーズは想い起こしている」。
「大統領になったことでジャックの女遊びはなお盛んになった」。
「あれだけ富と権力を手に入れていたにもかかわらず、ジョーは幸せな人ではありませんでした」と、長年、愛人だったジャネット・デイ・ロシエイが言っています。人間にとって幸せとは何か、考えさせられる言葉ですね。