意外なことに、ジョゼフ・フーシェは心優しい家庭人であった・・・【山椒読書論(387)】
【amazon 『政治のカメレオン ジョゼフ・フーシェ』 カスタマーレビュー 2014年1月15日】
山椒読書論(387)
ナポレオンが恐れた男、ジョゼフ・フーシェについては、『ジョゼフ・フーシェ――ある政治的人間の肖像』(シュテファン・ツヴァイク著、高橋禎二・秋山英夫訳、岩波文庫)という最高レヴェルの評伝があるが、もっとフーシェのことを知りたいという向きには、『政治のカメレオン ジョゼフ・フーシェ――ナポレオンも怖れた男』(長塚隆二著、読売新聞社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)を薦めたい。
本書の特色は3つある。①フーシェ自身の回想録を初め、同時代人の回想録や日記をうまく利用している、②フーシェを近代警察の基礎を築いた創始者として高く評価している(驚くべきことに、ナポレオンの最初の妻・ジョゼフィーヌもフーシェの私設スパイであったことが明らかにされている)、③フーシェが家庭にあっては、容姿に恵まれているとは言いかねる妻に大変優しい夫であり、かつ愛情の濃やかな父親であったという人間的な面にも照明を当てている――この3点である。