榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

油まみれの町工場を、人はプログラムを作るだけ、後は機械にお任せの「夢の工場」に変身させた男・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1253)】

【amazon 『遊ぶ鉄工所』 カスタマーレビュー 2018年9月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(1253)

東京・八重洲のギャラリー白百合で開催中の、三共(現・第一三共)で同期の岡邦一の油彩画展で、風景画を鑑賞しました。ポルトガルのポルトの船着き場、イタリアのアンギアーリ城の内と外、塔の街 サンポール、ミケランジェロ広場近くのバラ公園からのフィレンツェ市街、ヴィンチ村、フランスの砦の街 サン・ジミニャーノ――と、ヨーロッパ旅行の気分を味わうことができました。

閑話休題、『遊ぶ鉄工所――ディズニー、NASAが認めた』(山本昌作著、ダイヤモンド社)の著者は、3つの点で他の経営者と異なっています。

第1点は、企業経営の目標が明確なこと。著者は、「社員が誇りに思えるような『夢の工場』をつくろう」、「油まみれの工場を『白衣を着て働く工場』にしてみせる」という目標を立てたのです。

第2点は、目標を達成するための戦略が具体的で、社員にきっちり理解されていること。「量産ものは、やらない」、「ルーティン作業は、やらない」、「職人は、つくらない」という型破りな基本方針の下、①「人」を変える、②「本社」を変える、③「つくるもの」を変える、④「つくり方」を変える、⑤「取引先」を変える――という思い切った変革に取り組んだのです。

例えば、「『つくり方』を変える」とは、「昼間は、デスクで人がプログラムをつくる。人が帰った夜中に、機械に働いてもらいます」という発想の大転換に基づいています。

第3点は、戦略に沿った実行力が抜群で、世界の一流企業からも一目置かれる技術力と画期的な生産システムにより、驚くべき業績を上げ続けていること。

著者に率いられたヒルトップは、「自動車メーカーの孫請だった油まみれの鉄工所」から「多品種単品のアルミ加工メーカー」へと脱皮し、「毎日同じ製品を大量生産していた町工場」は「24時間無人加工の夢工場」に変身を遂げました。

高度の技術力が認められ、ウォルト・ディズニー・カンバニー、NASA、ウーバー・テクノロジーズなど世界のトップ企業を顧客にするまでになっています。

業界常識を一掃した生産システムにより、業界水準を大きく超える20~25%という驚異的な利益率を達成しています。

ヒルトップ独特の「5%理論」とは、どういうものでしょうか。「会社が腐らないように、『5%』だけでもいいから、楽しいこと、新しいことをやっていこう」、「人材育成と要素技術の蓄積として、売上高の約5%をユーザーのニーズと関係のない製作費にあてていこう」というのです。

「儲かるかどうかわからないが、楽しそうだからやる」、「儲からなくても、社員のスキルが上がるならやる」をモットーに、「楽しくなければ仕事じゃない」が文字どおり実現されているヒルトップのような企業で、私も働いてみたかったなあ。