懐かしくて、怪しくて、いい加減で、どこか切ない横丁巡り・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1389)】
桃色の花の中の黒い葯が蛇の目のように見えるジャノメエリカが咲いています。オッタチカタバミが黄色い花を付けています。ダイコンが育っています。湧き水が水溜まりを作っています。因みに、本日の歩数は10,751でした。
閑話休題、『グッとくる横丁さんぽ――全国50の裏通りを味わうイラストガイド』(村上健絵・文、玄光社)では、「昭和の香りにグッとくる」「遠ざかる時代にグッとくる」「いい加減さにグッとくる」「怪しさにグッとくる」「切なさにグッとくる」全国の50の横丁が紹介されています。
「横丁や路地に軒を連ねるのはいささか時代遅れになった店や小商いを黙々と続ける店が大半。・・・年齢を重ねてからは、むしろ周回遅れのありふれた裏通りへ足が向かいます。功成り名を遂げる幸運な人はひと握り。多くは地味で平凡な毎日を懸命に生きていることと、裏通りの風景とを重ね合わせてしまうかもしれません。・・・何より、時間がゆっくり進む横丁や路地をのんびり歩けば、とんがった心がちょっぴり穏やかになってきます。それにうまくて肩の凝らない店も多いしねえ。というわけで、ぼちぼち出かけましょうか、横丁さんぽ」。
●東京・神保町の「ミロンガの路地」――戦後風味の珈琲が香る路地、●埼玉・川越の「菓子屋横丁」――遠い記憶がよみがえる味と匂い、●東京・渋谷の「のんべい横丁」――スクランブルより「ええじゃないか」、●東京・有楽町の「有楽町高架下飲食店街」――松が支えるニッポンの大動脈、●東京・神楽坂の「兵庫横丁」――馬が歩いた横丁、●東京・人形町の「甘酒横丁」――歌舞伎町の本家、●東京・新橋の「ニュー新橋ビル」――殿方の花園、●東京・新宿の「思い出横丁」――時代を背負い続ける横丁。いずれも懐かしい場所ばかりです。
洒脱な文章によって、横丁の気配が臨場感豊かに伝わってくるだけでなく、著者自身の手になる絵がほのぼのとした味わいを醸し出しています。東京・北千住の「宿場町通り」に添えられている「宿場町通りから西へ徒歩15分の『タカラ湯』は、昔ながらの貴重な銭湯」の絵は、月光に照らされて浮かび上がる銭湯が懐旧の念を掻き立てます。
北海道・稚内の「波止場横丁」の雪が降る「ロシア料理やラーメン屋、居酒屋など5軒の店からなる波止場横丁」の絵は、侘しさが滲み出ています。人生に絶望したときは、こういう場所で呑みたいなあ。