榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

小学校の担任教師が、子どもたちと作り上げた「世界一」のクラス・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1652)】

【amazon 『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』 カスタマーレビュー 2019年10月26日】 情熱的読書人間のないしょ話(1652)

イヌサフラン、シュウメイギク、ホトトギスの花、ミズヒキ、トキワサンザシ、カラスウリ、キウイフルーツ、カキの実をカメラに収めました。一番手前のシュウメイギクにはワカバグモの雌がいます。因みに、本日の歩数は10,596でした。

閑話休題、正直に言うと、我が国の現在の政治と教育の頽廃ぶり、堕落ぶりには本当に唖然としています。こんな私だが、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(沼田晶弘著、中央公論新社)を読んで、少しホッとしました。

本書は小学校の担任を務める著者の実践記録集であるが、私が小学生だったら、小学生の親だったら過ごしたい思う学校生活が生き生きと再現されています。担任初日の、緊張したままの子どもたちの写真撮影、本音OKの自己紹介、ダンス系の音楽に乗りながら、短時間で効率を上げるダンシング掃除、運動会のリレーで勝つための作戦、子どもたちが総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣などを担当する内閣制度、スーパーマーケットの秘密を探る研究など、さまざまな取り組みを通じて、子どもたちはやる気を発揮し、自主的に問題を解決する力を蓄えていきます。そして、やればできるという成功体験をいくつも積み重ね、総合学習の集大成としての映画を見事に完成させます。社会とのつながりをごく自然に作れる人になった子どもたちを目にした著者は、飛行機がとうとう「世界一のクラス」という目的地に着陸したことを実感するのです。

著者の基本的な考え方は、「『思い』や『期待』を伝えるには、思い期待するだけではだめだ。それらを確実に実現するための手段、つまり『方法』について考え工夫することが必要」というところから出発しています。

著者の考え方が、具体的に5つにまとめられています。①ボクが考える「教育」の目的とは、自立支援です。②ボクが考える「子ども」とは、体の小さい一人の人です。③ボクが考える「学校」とは、生きていく力を身に付ける場所です。④ボクが考える「友達」とは、チームワークの楽しさを分かち合う相手です。⑤ボクが考える「教師」とは、子どもたちの能力を引き出す人のことです。

著者の担任としての目標は、たった3つだけです。①世界一楽しいクラスにすること。②何でも自分でできる人になってもらうこと。③指示を出さないこと(自主性が育ってほしいといつも考えているから)。

「実際の社会にはそうした工夫を求められるシーンはたくさんあります。だから、たとえ小学校の運動会でも、工夫して勝利を手にすることは貴重な体験。なぜなら、社会で生きていく力をつけることが、教育というものの目的だからです」。この言葉には、本当に痺れました。

「あの時はこうやって乗り越えたという経験。難しいことも何とかやりとげられたという自信。失敗しても立ち直ることができるという安心。助け合う仲間がいるという信頼。ダメなら別のやり方を探せばいいという発想。ちゃんとした成功体験があれば失敗しても平気」。これは、ビジネスパースンたちにも、そのまま通用しますね、ぬまっち!