榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

奴隷の哲学者・エピクテトスから、その真に自由な生き方を学ぼう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1686)】

【amazon 『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業』 カスタマーレビュー 2019年11月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(1686)

昨晩は、仲間たちとのヘルスケア・サイエンスの未来等についての意見交換で盛り上がりました。

閑話休題、『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業』(荻野弘之著、かおり&ゆかり漫画、ダイヤモンド社)は、ストア派の哲学者・エピクテトスの言葉から、私たちが生きる上でのヒントを得ようという意欲的な試みです。必要に応じて添えられている、かおり&ゆかりの漫画が理解を助けてくれます。

「エピクテトスは、ローマ時代のストア派を代表する哲学者である。・・・同時代のストア哲学といえば、キケロ、セネカ、マルクス・アウレリウスといった名前が浮かんでくるが、こうした系譜の中核にいるのが、エピクテトスという奴隷出身の哲学者なのである。彼は紀元50~60年頃に、奴隷の両親から生まれた苦労人で、彼自身も若い頃は奴隷として過ごし、解放された後は私塾を開いて生計を立てた。解放奴隷出身の哲学者とは、哲学史上でも珍しい。エピクテトスの一生は、いわゆる『学者』でも、ましてや『エリート』でもない。奴隷としての出自、慢性的な肢体不自由、国外追放の辛酸、塾講師としての不安定な収入、といった多くの困難を抱えながら、当時の流行思想でもあったストア派の哲学を自分自身の『生き方』として学び取り、それを洗練させていった。地位や財産や権力とは無縁な、ごく平凡な市井の庶民が、いかにして真の自由を享受し、幸福な生活にあずかることができるのか。そのためにいかなる知恵が大切なのか――」。

エピクテトスは、「他人の評価」という泥沼から脱することの重要性を説いています。「自分がいかに努力してみたところで、他人からの評価や評判は最終的に自分で自由に制御できることではない。逆に、そうした他人の目や評価にこだわりすぎると、自分が進むべき道を見失うことになりかねない。だからこそエピクテトスは、他人の評判を恐れるな、と戒める」。

エピクテトスは、人々を不安にするものは、事柄それ自体ではなく、その事柄に関する考え方だ、と言っています。「たとえば、死は決して恐ろしいものではない。・・・むしろ『死は恐ろしい』という、我々が死について抱く考え方、それこそが恐ろしいものの正体なのだ」。

困難な事態に直面したときの対処法が示されています。「勉強も仕事も、順風満帆なことは滅多にない。長く働いていれば、スポーツ選手同様に、スランプに陥ったり、急に伸び悩んだりすることもあるに違いない。だが、感情に囚われたままでは、打開策は見えてこない。困難は困難として受け止めたうえで、自分には何ができるかを点検する。それが『困難な事態に対処するために、君がどんな能力を持っているかを探し出す』ということだ。とはいえ、そうしたメンタルの切り替えは、一朝一夕でできるものではない。だからこそエピクテトスは、『習慣』の重要性を指摘している。『置かれている状況を冷静に受け止める』と言うのは簡単だが、感情に流されやすい人間がすぐにできるものでもない。そのためには、常日頃から自分の感情を、あたかも第三者のような目で観察する習慣を身につけるのがいいだろう。『今、自分は少し取り乱しているから、修正しよう』といった日々の自己修正の繰り返しが、困難な局面を切り抜ける力になってくれるはずだ」。