榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

余命6ヵ月と宣告された夫が、愛する妻のために再婚相手探しを始めた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1881)】

【amazon 『ボクの妻と結婚してください。』 カスタマーレビュー 2020年6月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(1881)

ヒガシニホントカゲの幼体、アズマヒキガエルの体長1 cmほどの幼体、カマキリの体長2 cmほどの幼体をカメラに収めました。ニホンカナヘビはしょっちゅう目にするが、ヒガシニホントカゲとの出会いは本当に久しぶりです。コシアキトンボの未成熟の雄を撮ろうと粘るも、ピントがなかなか合いません。それならと、撮影助手(女房)が反対側からスマホで救援撮影。スズメバチ・トラップにオオスズメバチ2匹が捕捉されています。スミスハキリバチ、アカボシゴマダラの春型、ヒメアカタテハも撮影できました。因みに、本日の歩数は12,173でした。

閑話休題、『ボクの妻と結婚してください』(樋口卓治著、講談社文庫)は、余命6ヵ月と宣告された夫が、後に残される妻のために再婚相手を探す物語です。

「9月25日 余命あと181日」は、このように始まります。「秋の特番まっさかりの頃、僕は病院の診察室にいた。すい臓ガン。現代の医学で見積もると、残りの命は約6ヵ月だという。・・・放送作家・三村修治、45年の人生は、番組だとあと24回で打ち切りになるのだ。僕は放送作家をして22年になる。担当はすべてバラエティ番組で、『ためになる』というよりは『楽しい』部類のものが多い」。

「僕には家族がいる。結婚して15年になる妻・彩子38歳と息子・陽一郎10歳だ。仕事が忙しく、家庭をこれでもかというくらい顧みない夫なのに、頭をよぎるのは『妻になんて言おう』ってことだけだった。妻と息子を残して、6ヵ月後には旅立たなくてはならない。あまりに急すぎる」。

「三村修治の妻、彩子は専業主婦である。毎朝6時に枕元に置いた携帯電話の震えで目を覚ます。音を鳴らさないのは横で朝方、床についた修治が寝ているからだ」。

「『そうだ、妻の結婚相手を探そう!』。妻の結婚相手を探す。今まで、思ったこともなかった。そりゃそうだ、夫なのだから。でも、夫だからこそ思いついたのだ。・・・この企画のルールは。絶対に妻にバレずに成し遂げるということだ。決めた。愛する人の未来に幸せを残すと決めた」。

ここから、修治の、妻に内緒の、妻に代わっての婚活が始まります。ところが、なかなかうまくいきません。そこで、「2月5日 余命あと48日」に、修治は腹を決めます。「深夜2時過ぎに帰宅し、妻と息子の寝顔を見た後、僕はある決心をした。放送作家を引退する。妻の結婚相手探しに本腰を入れるため放送作家の仕事をすべて辞めるのだ」。

「2月23日 余命あと30日」――「僕の人生も遂にあと1ヵ月となった。今日、伊東正藏に会う。伊東が期待外れの相手だったら、もう間に合わないかも知れない。ここでおじゃんになっては死んでも死にきれない。余命ギャグも板についてきた。もし、今、神様が何かを叶えてくれるとしたら『妻に相応しい人が僕の目の前に現れるように』だ。心の底からそう思った」。紆余曲折があったものの、修治が妻の再婚相手はこの男以外にはいないと見込んだ正藏と、修治から無理やり説き伏せられた彩子の見合いが実現し、交際が始まります。

「3月17日 余命あと8日」――「僕も、やっぱり妻の夫になるのはこの人しかいないと思った。間に合ってよかった。これで勇気を持って死んでいける。『伊東さん、心を込めて言います。本当に妻をよろしくお願いします。そして、僕の妻と結婚してください』。伊東は優しい目で僕を見て、力強く頷いてくれた」。

「桜の季節より少し早い3月25日、家族に看取られ。僕は逝った」。

修治が亡くなってから1週間後に、あっと息を呑むような、どんでん返しが待ち構えていようとは! 突然、嗚咽を抑え切れなくなった私の顔を、何が起こったのか状況が呑み込めない女房が、心配げに覗き込んでいます。