榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

弘兼憲史らしさ満載の老人論・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1881)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年9月16日号】 情熱的読書人間のないしょ話(1981)

東京・港の毛利庭園を散策しました。サフランモドキ(ゼフィランサス・カリナタ)が花を咲かせています。因みに、本日の歩数は11,278でした。

閑話休題、『めざせ、命日が定年――終わり笑えばすべてよし』(弘兼憲史著、幻冬舎)は、弘兼憲史らしさ満載の老人論です。

「僕は死ぬ時に『あれをやっておけばよかった。これをやっておけばよかった』と後悔することだけは絶対にイヤです。仕事も遊びもやりたいことはすべてやる。そのための努力は惜しまないという一心で生きてきました」。3歳年下の弘兼と私の考え方は完全に一致しており、私も死ぬ時、絶対に後悔したくないと考えています。

「よく人間観察をします」。弘兼のは、漫画を描くための人間観察だが、私の人間観察は趣味の一つです。「僕の場合は極端かもしれませんけど、こんなふうに『外側』を見るって、結構大事なことなんじゃないでしょうか。人の様子や風景を改めて観察したり、知らない人どうしの会話に耳をそばだててみたり、好奇心を持って自分の外側を見てみると、思わぬ発見がたくさんあって、すごく面白いと思うんです。年をとると、どうしても自分にばかり関心がいきがちになります。でも、あまり内面に深く入り込んでしまうと、くよくよしたり悩んだり、悪いことになりかねない。だから自分に没頭するより外の世界を観察する。これ、悪くないと思いますよ」。

「ストレスを溜めないコツは『まあ、いいか』」。これは、早速、実行してみようと思います。

弘兼の同窓会に対する考え方は、なかなか興味深いものがあります。「この年になってつくづく思いますけど、同窓会はできれば参加したほうがいいです。50代までは『同窓会なんて』と思っていたとしても、60歳過ぎると妙に学生時代の仲間が懐かしくなったりするもんです。僕は中高一貫校に通っていたので、そちらの同窓会に参加することもあるんですけど、学生時代の仲間って、なぜか歳月が経っても会えばその頃に戻れるんですよね。普段は社長をやってて命令ばかりしてるヤツが、同窓会では『お前も偉くなったな』なんて頭をはたかれたり、それほど偉い役職についてないヤが、『俺が仕切る!』とばかりに張り切り出したり(笑)。話の内容は他愛ない思い出話ばかりですけど、昔を懐かしく思い出しながら、損得勘定抜きに語り合えるって、やっぱりいいもんだなと思います。それに、同窓会ってポジティブな人が集まるから、だいたい明るい場になるんですよね。成功者とまではいかなくても、それなりに人生うまくいって、充実した生活を送っている人が集まってきますから、当たり前の話ですけど、会社をクビになったとか借金まみれで困っているヤツは、同窓会なんか来ないですからね」。

「そもそも死ぬ時は人間一人ですよ。どれだけ周りに人がいようが、あの世へ行く時は自分一人。一人だろうが人がいようが、結局死というのはすべてが『孤独死』なんじゃないでしょうか。・・・最近年のせいか資料を読むのも面倒臭くて、ちょっと創作意欲が失せそうで、編集者に『やる気を出してください!』ってお尻を叩かれているような状態ですけど、こんな調子でネームを考えたり絵を描いたりしながら、ペンを片手にガクッと逝けたら、やっぱりそれが最高の死に方だと思います」。弘兼の漫画は飽くまで仕事だが、私の場合も、趣味で行っている書評書きの最中にガクッと逝けたら最高と思っています。