榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

夏井いつきの私生活も垣間見える俳句随筆集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1933)】

【amazon 『夏井いつきの日々是「肯」日』 カスマターレビュー 2020年7月30日】 情熱的読書人間のないしょ話(1933)

キツネノカミソリが群生しています。フヨウ、カンナが花を咲かせています。アップルゴーヤー、ヘチマが花と実を付けています。

閑話休題、季節感溢れるエッセイ集『夏井いつきの日々是「肯」日』(夏井いつき著、清流出版)は、俳人・夏井いつきの俳句、文章と、写真家たちの写真で構成されています。

「生きづらい日々の中にも、小さな喜びがある。俳句は、その見つけ方を教えてくれます。この本は、俳句と共に生きる私の『喜びの遊び』を綴ったものです。人生に起こる出来事を、是は是とし、非は非として受け入れる。全ては俳句のタネだと腹を括る。そこから新しいものの見方が生まれてくるのだと、身をもって信じております」。

春――。●花びらへ亀浮き上がりくるゆらぎ。「俳句を始めると退屈という言葉が無くなる。例えば、待ち合わせ場所に待ち人が現われない時、渋滞してるとか電車に乗り遅れたとか、その理由さえ分かれば心配する必要もなくなる。となれば『待つ』という中途半端な時間は、格好の吟行となる。『吟行』といっても別に高尚なことをやるわけではない。要は俳句のタネを探す遊びだ」。私の場合も、デジカメを携帯しての毎日の散策は、その日のブログとフェイスブックに載せる写真のタネ探しを兼ねています。

夏――。●幾百の本を砦に梅雨籠。「旅の仕事が多い私としては、『出歩きや』どころか、家に籠もっていられる時間が嬉しい。読みかけの本、読みたい本を積み上げ、あとは真昼のハイボール一杯があれば幸せ」。この気分、分かるなあ。

秋――。●紳士たる夫よ熱き焼栗剥いてくれ。「みのもんたさんが司会するその番組は、熟年遠距離再婚した夫(テレビCMプロデューサー)が、定年後、俳人の妻の付き人となった生活を追うドキュメンタリー。結婚によって人生が激変した夫婦を紹介する番組だった。・・・街角で買った焼き栗が熱ければ剥いて貰う。ペットボトルの蓋も開けて貰う。料理も買い物も旅程の手配も全て夫まかせの日常がバレバレとなった今、ますます私は怯まない」。夏井の俳句だけでなく、その私生活もなかなか興味深いものがあります。

冬――。●冬鵙や川はあかるき朝の音。「仕事の性格上、朝夕必ずは無理がある。いっそウォーキングマシンを買おうかと思ったが、夫が散歩に付き合ってくれるというので歩き創めた。散歩は定点観測吟行だ。土手を歩く、石蕗が咲いてた、初時雨に会った、冬の鵙が猛る。豊かな二人の時間が動き出した」。私も、撮影助手(女房)と毎日散策しているが、著者の言うとおり「定点観測」になっています。