榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本のカエルを知るのに最適な入門書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1985)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年9月20日号】 情熱的読書人間のないしょ話(1985)

女房の親友・岡田文子さんから、庭で孵化したキジバトの雛がこんなに大きくなりましたと写真が送られてきました。スズメが一列になっています。和ナシ(日本ナシ)の野生種・ヤマナシ、ツバキ、チャ(チャノキ)が実を付けています。

閑話休題、『日本のカエル48 偏愛図鑑――東大生・さこの君のフィールドノート』(迫野貴大著、河出書房新社)は、日本のカエルを知るのに最適な入門書です。

「本書では、日本のカエル全種類を見るために全国を旅した経験を元に、種ごとの個性豊かな生態を紹介します。一人、机で図鑑の中のカエルたちを眺めて憧れていた中高生時代の僕。大学生になり、生研のみんなと出会って、生きものを探す楽しさ、見つける喜びを知りました。あなたにとってこの本が、カエルの魅力に気づくきっかけになればとてもうれしいです」。日本のカエル48種のうちの、あと3種との出会いを果たせば全制覇というところまで迫っているそうです。

写真、イラスト、名前、探す場所、レア度、基本データ、エピソード、外見の特徴、鳴き声、生態の特徴――によって、私たちの理解が深まるように工夫されています。

用語集も充実しています。例えば、●基亜種=亜種のうち、タイプ標本(種を記載したときの基準となった個体の標本)にあたるもの、●在来種=その地域にもともと生息している種、●固有種=世界中でその地域にしか生息していない種、●国内外来種=外来種のうち、国内のある場所から別の場所へ持ち込まれた種。北海道のアズマヒキガエルや伊豆大島のモリアオガエルなど、●抱接=繁殖のため雄が雌に抱きつくこと。抱接することで、雌が産卵するとすぐに雄が精子をかけることができる。なお、カエルは体外受精なので交尾はしない、●幼体=幼生(オタマジャクシ)から変態したばかりのカエル。成体(大人)と比べると体はまだ小さいが、見た目はほとんど同じ――といった具合です。

メスとオスについて、興味深いことが記されています。「カエルは主に体外受精で、外部生殖器はありません。一般的にメスの体の方がオスよりも大きく、オスには婚姻瘤(抱きダコ)があります。鳴嚢があるのもオスだけなので、鳴くのは基本的にオスだけです」。

似ているタゴガエル、ナガレタゴガエル、ヤマアカガエル、ニホンアカガエルの見分け方、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ナゴヤダルマガエルの見分け方、ツチガエル、ヌマガエル、サドガエルの見分け方――も、勉強になりました。