孤独な一人の読書さえも、それを支える無数の要素によって成り立ち、支えられている・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2029)】
日本盆栽協会流山支部の「晩秋の盆栽・水石展」で盆栽を鑑賞しました。盆栽と向き合うと、そうかっかするなよと諭されたり、君も頑張れと励まされたりします。
閑話休題、『読書の歴史を問う――書物と読者の近代(改訂増補版)』(和田敦彦著、文学通信)では、読書の歴史が多面的に論じられています。
「孤独な一人の読書さえも、それを支える無数の要素によって成り立ち、支えられている」。
「書物が読者に『たどりつくプロセス』を考えるとき、そこには書物が生まれ、流通し、販売され、あるいは貸借されるプロセスがある。そしてこのプロセスは書物の出版時点で終わるわけではなく、その書物が遺る限り続いていく。つまりその書物が10年後、100年後の読者へとたどりつくプロセス、通史的なプロセスもそこには生まれるわけである。例えば大正期に発禁処分を受けて帝国図書館へとたどりついた書物が、100年後の現在にデジタル化されてオンラインで読者へとたどりつくように」。
「書物が生まれ、同時代の読者へとたどりついても、両者の関係は終息しない。場合によってはその書物はさらに様々な人の手に渡り、様々な場所を経ていく。書物の来歴とは、書物がどこから、どこに、なぜ移ってきたのか、という歴史である。それは単にどこにいつからその本があるという問題というよりも、その書物と読者との関係の歴史、その堆積といった方がよいだろう」。
「このような書物の来歴を考えること、調べていくことがなぜ重要なのだろうか。これは一冊の書物の場合ばかりではなく、まとまった一群の書物、例えばある蔵書を構成する書物がどこから、どのようにやってきたのか、といった蔵書の来歴を考えることでもある。それはいつ、どのような読者が、なぜその書物を必要としたのか、という読者の歴史をたどるうえの手がかりともなるのである。それはある地域や場所、機関において読者が何を知り、どう考えていたのかをとらえていく、基礎的な情報ともなろう」。
読書というものの全体像を俯瞰的に眺めようとするとき、手引きとなる一冊です。