榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

モヤモヤ悩んでいる少女が、この本で救われる?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2147)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年2月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2147)

ミツマタ(写真1~3)、オウバイ(写真4、5)、ジンチョウゲ(写真6)、ビワ(写真7、8)、ツバキ(写真9)の花が咲いています。モクレン(写真10、11)の蕾が膨らんできました。

閑話休題、『モヤモヤしている女の子のための読書案内』(堀越英美著、河出書房新社)は、現在、悩んでいる少女向けに書かれているが、男女を問わず、また年齢に拘わらず役立つ読書案内です。

「もし人に打ち明けづらいモヤノヤを抱えているなら、周囲に知られることなく多様な価値観に触れられる本は、心の整理整頓に役立つでしょう」。

「あの頃の自分を守っていたのは間違いなく、戦うための言葉を授けてくれた読書でした。読書は、心を守るシェルターにもなり、理不尽な周囲に抗う武器にもなります」。

●マイナス思考から抜け出せない――
おすすめ本は『絶望名人カフカの人生論』。「絶望するならとことん深く、自分も社会も底まで掘り起こす勢いでしっかり落ち込む。それが人生という果実を味わい尽くす秘訣なのだと気づかされます。つらいときは無理に起き上がらずカフカと一緒に倒れて絶望し、さらなる深みを目指しましょう」。

●才能や容姿に恵まれている人を見るたび、嫉妬や劣等感にとらわれて苦しい――
おすすめ本は『天才はあきらめた』。「嫉妬、劣等感、憎悪といったネガティブな感情を持つと、自分のことがイヤになることもしばしばです。でも著者が教えてくれるのは、そうした強く苦しい感情こそが、自分を高めてくれる原動力になるということ」。

●SNSで「いいね」やフォロワーの数が気になってしまう自分がイヤ――
おすすめ本は『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』。「独特な語彙で全肯定してくれる本書を読めば、自己嫌悪が消え失せて、ポジティブな気持ちになれるかもしれません」。

●「ブスが調子乗ってる」と思われるのが怖くて何事も積極的になれない――
おすすめ本は『きりこについて』。「『きりこは、ぶすである』という衝撃的な一文から始まる小説『きりこについて』は、インパクトのある容姿をもって生まれたきりこと、爆撃後の街のようなきりこの歯並びを愛する天文学的に賢い飼い猫『ラムセス2世』の物語です」。

●恋人に愛されてないのかといつも不安です――
おすすめ本は『愛するということ』。「どうすれば、人を愛する技術を身につけられるのか。その前提条件として、フロムが挙げるのは『一人でいられる能力』です。自分がしていることに集中し、全身で現在を生き、内なる声に耳を傾ける。自分の感情を冷静に観察し、客観性と理性を身につけてはじめて、他者を正しく『信じる』ことができるようになるとフロムは述べます。『みんながいい人だと言っているから』『人気者だから』とやみくもに相手を信じるのではなく、それまで培った自分自身の思考力・観察力・判断力や経験に基づいた信念によって信じること。さらに勇気を出して一歩踏み出し、信じた相手にすべてを賭けてみること。これがフロムの説く『愛する技術』です」。

●男と女の前で態度が違う女子が嫌い――
おすすめ本は『風と共に去りぬ』。「友情よりもモテを優先する女子はいつの時代も嫌われるものですが、そんな『女から嫌われる女』を主人公に据えてなお名作と名高い小説が、『風と共に去りぬ』です」。

●人の気持ちを深読みして傷ついてしまいます――
おすすめ本は『悪童日記』。「人の気持ちに敏感なのは悪いことではないのですが、深読みで疲れてしまうときは、過酷な環境で傷つかない術を身につけたすごい子どもたちの物語『悪童日記』が参考になるかもしれません」。

●いじめがつらくて死にたくなる――
おすすめ本は『風葬の教室』。「いじめの問題は、まず信頼できる大人や組織に相談して解決を図るのが一番です。でも、悪意によって傷ついた心を回復したいときは、いじめ体験を少女の一人称で淡々と語る短編小説『風葬の教室』が、その助けになるかもしれません」。

●競争が苦手。弱肉強食の社会で落ちこぼれそうです・・・――
おすすめ本は『弱者の戦略』。「『弱い』雑草の生態を専門とする植物学者が、弱い生きものたちの多彩な生存戦略を紹介しているのが『弱者の戦略』です。本書の主張は、生きものにとって重要なのは他者を打ち負かすことではなく、生き残ることだということ。弱い生きものの生き残り術を知れば、競争が苦手な人のヒントになるかもしれません」。

●女の子の価値が容姿で決まる空気がつらい――
おすすめ本は『日本のヤバい女の子』。「(鉢かづき姫のように)周囲になんと言われようと自分が選んだ武器で戦えば、容姿というフィールドで戦わなくても隣にいてくれる人間と出会える。昔話からそんな勇気も引き出せる本です」。

あなたの周囲に人知れず悩んでいる少女がいたら、ぜひ、この本の存在を教えてあげてください。