情報量の多い,大人向けの大型恐竜図鑑・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2151)】
情熱的読書人間のないしょ話(2151)
今季初めてウグイスの練習中の囀り(中級レヴェル)を耳にしたが、残念ながら撮影は失敗。ジョウビタキの雌(写真1)、モズの雄(写真2、3)、ヒヨドリ(写真4)、ハシブトガラス(写真5)、ハシボソガラス(写真6)をカメラに収めました。フサザキズイセン(クランド・モナーク。写真7、8)は花弁の先端が尖っています。ウメ(写真9、10)が芳香を放っています。
閑話休題、『アメリカ自然史博物館 恐竜大図鑑』(マーク・A・ノレル著、田中康平監訳、久保美代子訳、化学同人)は、大人の鑑賞に堪え得る大型恐竜図鑑です。
44種の恐竜に関する最新の知見だけでなく、その化石発見のドラマも詳細に解説されているので、ワクワク感を味わうことができます。
例えば、ヴェロキラプトル・モンゴリエンシスは、このように記されています。「初期の『ジェラシック・パーク』シリーズに出てきたヴェロキラプトルの画像と現在私たちが考えている姿とを比較してみよう。・・・人間くらいの大きさのいかにも爬虫類らしい恐竜が、薄暗いラボのなかをコソコソ隠れながら群れになって狩りをする姿が思い浮かぶだろう。このイメージのどこが間違っているのだろうか。第1に、大きさが間違っていた。ヴェロキラプトルはヒトと同じ大きさではない。・・・生体のヴェロキラプトルの実際の全長は中くらいのサイズのコヨーテ程度で、体長の大部分を占めるのが尻尾だ。ヴェロキラプトルの頭蓋骨は大きなキツネほどで、おそらくこの恐竜を脅威に感じるのはウサギくらいであろう。だから、『ジェラシック・パーク』のキャラクターとは対照的に、人間にとってヴェロキラプトルは、うるさく吠えるダックスフントほどの危険度で、容易におとなしくさせられるだろう」。
「最初のヴェロキラプトルの標本は、1923年8月に、アメリカ自然史博物館の中央アジア調査隊が、モンゴル中央部にある有名な発掘地、バインザク、つまりフレーミング・クリフで発見した。・・・文献のなかで彼(ヘンリー・フェアフィールド・オズボーン)は、この恐竜は『鳥様恐竜』であると予知的に観察していた。オズボーンは自分がどれほど正しかったのか知らずに亡くなった。約70年後、ヴェロキラプトル・モンゴリエンシスは、鳥の起源をめぐって、ふいに激しさを増した論争のなかで脚光を浴びる恐竜のひとつとなった」。
「(ヴェロキラプトルの)究極の標本はモンゴル南部のバインザク発掘地に隣接するツグリキンシレ発掘地から産出した『格闘恐竜化石(ファイティング・ダイナソー)』と呼ばれるものであろう。・・・1971年に発見されたこの標本は、約8000万年前の瞬間をとどめているような化石である。これはヴェロキラプトル・モンゴリエンシスと組み合っているプロトケラトプス・アンドリューシという2体の骨格で構成されている。プロトケラトプスは、植物食恐竜で、生体は大型のブタほどの大きさになる。この恐竜は、現在のモンゴル郊外の生態系でいえば、オオカミに捕食されるヒツジとおそらく生態的に同位の種であろう。これらの地層に保存されていた遺骸の特徴からして、かれらは生き埋めになったという強力な根拠がある。こうして保存されたのが、ヴェロキラプトルの成体と、それと戦っているようにみえるプロトケラトプスである。ヴェロキラプトルの猛禽類みたいな大きな鉤爪が、プロトケラトプスの、頭部に血液を送る重要な血管があるあたりに食い込んでいる。ヴェロキラプトルの右腕はプロケラトプスの口のなかにあり、その鋭い鍵爪のついた手は顔を引き裂いているが、前腕は砕けている。間違いなくこれは、約8000万年前に起こった捕食行為の動かぬ証拠である」。
「ヴェロキラプトルには、鳥類とごく近縁であることを示す根拠として、いくつかの特徴がある。たとえば、叉骨、頭蓋内の大きな空洞である副鼻腔、回旋する手首、S字型の首、すべて前方に伸びた指が手に3本あることなど。またヴェロキラプトルには羽毛があったと私たちは考えているが、それを補強する証拠としてふたつの要素がある」。
「ヴェロキラプトルが肉食動物であることはほぼ間違いない。鋭い歯や鍵爪はこの見解に適合している。とはいえ、ある意外な例としては、数年前に日本人調査隊によって発掘された標本がある。そのヴェロキラプトルの最後の餌は翼竜、つまり飛び立ちそこねた翼のある爬虫類であったことが(体腔から)確認されたのだ」。
このような情報量の多さが、本書の特徴の一つとなっています。