恐竜の復元像は、以前とは様変わりしている・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1570)】
我が家の塀を這っているオカダンゴムシとワラジムシをカメラに収めました。両者は似ているが、よく見ると違いが分かります。我が家の向かいの小学校の6年生たちが、夏休み中の校外学習に出かけていきます。因みに、本日の歩数は10,649でした。
閑話休題、『恐竜・古生物ビフォーアフター』(土屋健著、ツク之助イラスト、群馬県立自然史博物館監修、イースト・プレス)では、近年の化石の新発見、コンピューター技術の進歩、遺伝子解析の導入などにより、以前とは様変わりした恐竜の復元像が、イラストと文章で分かり易く説されています。
「研究の進展によって、特定の種の復元が変わることもあれば、一つの新種の発見によって、分類群全体の解釈が大きな影響を受けることもあります。のちに恐竜類というグループ全体のイメージを大きく変えることになったその恐竜の名前を、『デイノニクス』といいます。デイノニクスは全長3.3メートルほどの小型の肉食恐竜です。口には鋭い歯が並び、脚には大きなかぎ爪をもっていました。映画『ジュラシック・パーク』シリーズ、『ジュラシック・ワールド』シリーズに登場する『ラプトル』のモデルとしてよく知られています。デイノニクスは、アメリカの古生物学者ジョン・H・オストロムさんによって1969年に名付けられた恐竜です。このときまで、恐竜といえば、『巨大』で『鈍重』、『知能もあまり高くない』という認識が一般的でした。19世紀に、恐竜類というグループを人類が科学的に認識するようになって以降、100年以上も定着していた恐竜のイメージが、デイノニクスの発見で覆ることになったのです。理由は簡単です。デイノニクスのスマートな姿は、どうみても「鈍重で知能があまり高くない』ようにはみえないからです。・・・デイノニクスの発見とその研究は、他の恐竜たちの復元にも大きな影響をあたえることになります。事実、『ティランノサウルス』などが前傾姿勢をとり、よりアグレッシブな姿で描かれるようになったのは、このころからです。1970年代にはじまる、恐竜像の見直しは、『恐竜ルネサンス』と呼ばれています」。
「小さい頭、長い首と長い尾、柱のように太い四肢をもつ恐竜グループ、量脚類。その中で、かつて『水中暮らしをしていた』と考えられていた種類がいました。それが、『ブラキオサウルス』です。全長20メートル超の巨大な恐竜です。・・・『ブラキオサウルスは水中暮らし』の否定は、1990年代には当然のことになりました。・・・現在では、ブラキオサウルスは陸上で暮らし、鼻は口先の上にあるという姿が一般的なものとなっています。・・・『名前が変わった巨大恐竜』といえば、全長約22メートルの『ブラキオサウルス』もその一つです。・・・この恐竜は、『ギラッファティタン』の名前で呼ばれることが近年では多くなっています」。
「『ティランノサウルス』は、もはや説明の必要がないくらい有名な肉食恐竜でしょう。全長12メートルの大型種で、がっしりとした大きな頭部と小さな前脚がトレードマークです。ティランノサウルスは、1905年に報告・命名された恐竜です。当初、復元されたティランノサウルスの姿は、頭を高く上げ、尾を地面につけた姿でした。『ゴジラのような姿』といわれる姿勢です。これは当時の『鈍重な爬虫類』というイメージを代表するもので、ティランノサウルスに限らず、二足歩行の恐竜はみんな同じように復元されていました。この姿勢は、長期にわたって復元の主流となっていました。・・・頭部を前に倒し、尾を後ろにピンと伸ばして歩行する『現代型のスタイル』が普及してくるのは、1980年代後半から1990年代前半です。・・・今日では羽毛のない(あるいは、部分的にしか存在しない)ティランノサウルスの復元が再び主流となっています」。
「1861年、ドイツにあるジュラ紀の地層から、一つの新種の化石(ほぼ全身骨格)が発見されたことが報告され、『アルカエオプテリクス』と名付けられました。いわゆる『始祖鳥』です。・・・始祖鳥の飛行能力に関しては、長い議論が続いています。・・・2018年に発表された研究では、始祖鳥の腕の骨が思いの外頑丈だったことが指摘されました。腕の骨は『羽ばたくことに耐えられた』というのです。羽ばたく筋肉はなかったのに、羽ばたくことに耐える骨と、空を飛び回ることに適した脳を持っていた。始祖鳥は、その謎の生態をめぐって、今も多くの研究者が分析を重ねています」。
「そこに1996年のシノサウロプテリクス発見の報告です。それまで鳥類だけがもつとされてきた『羽毛』が恐竜類に確認されたことは、この(鳥類の恐竜起源)説の決定的な証拠でした。シノサウロプテリクスの発見によって、鳥類の恐竜起源説はいっきに知られるようになり、今日では鳥類が恐竜類の一部であることは、ほぼ定説となっています」。
恐竜に関する知識を最新のものに更新するのに、最適な一冊です。