榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

文章をうまく書くための実践的な手引き書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2177)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年3月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2177)

年上の友人・吉井利臣さんの愛娘・吉井明子さんが、NHK・BS1の「NHK BS NEWS 4K+ふるさと」(毎週、月~金曜の23;45~24:10)の気象予報を担当することになりました(4K対応のテレビでなくても視聴可能)。我が娘のことのように喜んでいます。ジャーマンアイリス(写真4、5)、ボタン(写真6)が咲いています。隣家のジャスミン(写真7、8)が仄かな芳香を漂わせています。我が家ではクルメツツジ(キリシマツツジ)が咲き始めました。

閑話休題、『三行で撃つ――<善く、生きる>ための文章塾』(近藤康太郎著、CCCメディアハウス)は、文章をうまく書くための実践的な手引き書です。「谷崎潤一郎のような『文章読本』を書けるわけがない。ただ、雑誌や新聞やネットで、原稿の受け手である編集者から『このライターは、まあまあ書けるよ』と認められるくらいの文章術は、教えられる。実績がある。その技術は、社内の会議にかける企画書、社外へ出すリリース文を書くにも、必要にして十分過ぎるレベルでしょう。学生のリポートは、いわずもがなです」。

25のコツが挙げられているが、私が大きく頷いたのは、次の6つです。

●三行で撃つ――書き出しを外すと、次はない。
「最初の一文、長くても三行くらいでしょうか、そこで心を撃たないと、浮気な読者は逃げていきます。続きなど読んでくれない」。

●起承転結――転を味方につければサバイブできる。
「転を書けるライターが、生き残ります。・・・転を書けるとは、換言すれば、『考えることができる』ということです。・・・ここでは、読者を『転がす』こと、ものの見方で意表を突く方法を、いささかテクニカルに言語化しようと思う。初級、中級者は、転の5パターンを知っていれば十分だろう。①古今②東西③逆張り④順張り⑤脱臼。この5パターンである」。「脱臼」とは、話の筋を変えてしまうこと、関係ない話を始めてしまうことです。

●共感させる技術――響く文章は、説明しない。
「響く文章はエピソードで語る。・・・エピソードを書くために大切なたった1つのこと。五感を使う。五感で世界を切り取る」。

●説得する技術――メール上手は幸せな人生を送る。
「まとまった分量の文章を書くのは、いまではメールがいちばん多いでしょう。そういう意味では、うまいメールを書ける人こそ、出世する人です。仕事を任せられる人です。人は、人生のほとんどの時間を、仕事をして過ごしています。仕事が楽しい人は、すなわち、人生が楽しい人です。せいぜい、上手なメールを書かなければいけません」。

●グルーヴ感――推敲でサウンドチェックする。
著者の言う「グルーヴ感」とは、名演奏のジャスを楽しむといった感じを指しています。「文章が分かりにくくないか、論理の筋道が通っているかといった推敲は、最初の(推敲の)段階で済んでいる。あとはなにをしているのかと言えば、グルーヴが出ているか、サウンドチェックをしているのだ。小さく音読する。流れるように読めるか。つっかえるところはないか。句読点の位置は適正か」。

●書棚整理術――抜き書き帳で脳内を可視化する。
「(紙の)本は、脳内のネットワークになっているのだ。しかも、『自分にしか分からない』配置というところが肝心だ。・・・(本が)くっつく。つながる。(本を)吸い寄せる。電子書籍ではなく、『物体』としての本が有用なのは、ここだ。また、ここだけが、わたしたちが本を読み、場所ふさぎに(なろうと)も身近に置いておく理由だ。脳内に血が回る。神経系統に電気が走るのである。・・・その脳内ネットワークをさらに強化するものが、抜き書き帳だ。・・・抜き書きをすると、自分が『分かる』。・・・抜き書きをすると、自分が『変わる』」。私も「紙の本」派で、学生時代から始めた抜き書き帳は数十冊になっています。