推理小説新人賞の最終選考に残ったのに、著者は応募していないと言うではないか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2353)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年9月26日号】
情熱的読書人間のないしょ話(2353)
ストレプトカーパス・サクソルム(写真1、2)が咲いています。バナナ(写真3)が花と実を付けています。アンスリューム(写真4~6)の仏炎苞は光沢があります。
閑話休題、『中野のお父さん』(北村薫著、文春文庫)は、大手出版社の編集部員の田川美希が持ち込んだ謎を、東京・中野に住む高校国語教師の父が解くという、安楽椅子探偵小説の連作短篇集です。
例えば、「夢の風車」は、こんな物語です。
「『この度、文宝推理新人賞にご応募いただきました、国高さんの『夢の風車』が最終選考に残りました。わたくし田川が担当をさせていただきますが――』。いいかけたところで、『ちょっと待って下さい』。・・・『――応募していませんよ、わたしは』。・・・だが、続く言葉は、さらに意外なものだった。『――投稿したのは、一昨年のことですよ』」。
博識な父親の鮮やかな推理が見事に当たっていることが、北村薫の鮮やかな筆致によって臨場感豊かに描かれていきます。
北村作品を読むのは久しぶりだが、期待を裏切らない仕上がりです。