榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

私の本たちとの付き合い方(その6)――その本の魅力を伝えたくて、書評を書く・・・【情熱的読書人間のないしょ話(8)】

【恋する♥読書部 2014年3月11日号】 情熱的読書人間のないしょ話(8)

読んだ本たちの中で、この本の魅力を少しでも多くの人に伝えたいと強く感じたとき、私は書評を書き始めるのです。

私が書評を書くとき、心がけていることが3つあります。

第1は、けなすことをしない。というよりも、惚れ込んで、広く読まれるべきと確信した本の書評しか書かないということです。

第2は、引用を恐れない。著者自身の生の言葉を伝えることで、その本の魅力を実感してもらいたいからです。引用することによって、内容の伝達にとどまらず、その著者の語り口や持ち味も伝えることができると考えています。

第3は、著者が言いたいことを要約する。榎戸の書評は内容の要約が多過ぎるという意見があるかもしれません。この本を読んでほしいのはやまやまだが、いろいろな事情で読む時間がない人にも、著者が伝えたいことのポイントだけは知ってもらいたいと念じているからです。

友人から、「書評を書くときの参考書を教えてほしい」と言われたときは、丸谷才一、百目鬼恭三郎、谷沢栄一、向井敏、松岡正剛、呉智英、橋本五郎、米原万里、佐藤優らの書とともに、豊﨑由美の『ニッポンの書評』(豊﨑由美著、光文社新書)を薦めることにしています。

「わたしの考える書評は作品という大八車を後ろから押してやる『応援』の機能を果たすべきものです。自分が心の底から素晴らしいと思った本を、簡にして要を得た紹介と面白い読解によって、その本の存在をいまだ知らない読者へ手渡すことに書評の意味と意義があるんです」という豊﨑の姿勢に共感を覚えるからです。

豊﨑の、「批評と書評はまったくの別物と考えているのです」、「粗筋紹介も立派な書評」、「情報も大事、作家/作品へのリスペクトも大事。でも、読み物としての面白み(芸)も、わたしは書評の重要な要素のひとつだと思うのです」、「読者の『読みたい』を引き出せるか」、「書評には『その人にしか書けない』というものも存在するのです」、「わたしは『1Q84』の書評を書くつもりはありません」といった考え方にも同感です。