榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

私たちも、貧困母子家庭のことをもっと知ろう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(55)】

【amazon 『シングルマザーの貧困』 カスタマーレビュー 2015年4月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(55)

先週、担当した2つの研修のアンケート結果が送られてきました。びっしりと書き込まれた心温まるコメントを丹念に読んでいくうちに、次の研修も頑張ろうという気持ちが沸々と湧いてきます。若い人たちの息吹に接することは、最高の若返り薬です。気分よく散策に出かけたところ、近くの公園でウコンが咲き誇っているではありませんか。ソメイヨシノより遅めの4月中旬に咲き、数百品種あるサクラの中で、唯一、黄色の花を咲かせます。角度によっては、薄緑色に見える上品なサクラです。因みに、本日の歩数は10,741でした。

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閑話休題、貧困母子家庭のことをもっと知りたいと思い、『シングルマザーの貧困』(水無田気流著、光文社新書)を読んでみました。

「シングルマザーの貧困問題は、日本の社会問題の集積点である。それは、就労・家族・社会保障制度の3分野にまたがる問題を凝縮したものといえる。・・・たとえば2014年5月には、大阪市で生活保護を申請した30代のシングルマザーが、職員から『蜀がなければソープランドで働け』と言われたと、女性の相談に関わった弁護士がブログなどで明らかにした。彼女は夫のDVにより離婚、知的障害を持つ5歳の子どもと暮らしているという事情もあった。・・・シングルマザーになった理由は8割が夫との離別であり、それゆえ『自己責任』とみなされがちである」。

シングルマザー6名に聞き取り調査を行い、彼女たちの辿った選択の背景を検証し、そこから今日の日本社会の問題点を考察しています。単なる分析に終わらず、打開策にも触れていることが本書の特色となっています。

「シングルマザーの貧困問題」「離婚貧困・日本」「近代家族の矛盾」「選択的未婚の母」「根強い日本の文化規範」のいずれの章も読み応えがありますが、「シングルマザーの『時間貧困』」に注目してみましょう。

「日本のシングルマザーは、時間配分に関しては文字通り『男性並み』に働いている。そのうえ、平日の育児時間不足を補うべく土日は長時間育児に割いているのである。同報告の指摘にあるように、日本のシングルマザーは『就労率が高く、労働時間が長く、貧困率が高い』。このため、実質的に自由に使える時間に乏しい『時間貧困』なのである」。

「ひとり親支援は、何よりも次世代を担う子どもの支援を意味する。子どもたちは、誰もが自らが選択したわけではない環境で育っていかざるを得ない。ひとり親世帯で極端に貧困リスクが高まるこの社会では、子どもたちの間に広がる不平等を解消するため、積極的な支援が必要である。子どもたちの生育環境を整えることは、この国の将来を創ることと同義である。どのような世帯類型でも、家庭環境でも、子どもたちはその能力を発揮し幸福な大人になる権利をもっている。現状でのひとり親世帯への実質的な冷遇は、この子どもたちの権利を奪うことにほかならない」という著者の厳しい指摘が、強い説得力を持って私たちに迫ってきます。