榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

若くはない妻が、居候の若い米軍兵士と一夜の関係を持ってしまったら、あなたならどうする?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2458)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年1月9日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2458)

オオカマキリの卵鞘(写真1)を見つけました。フサザキズイセン(写真2)、ヤツデ(写真3)が咲いています。ユズ(写真4)、ウンシュウミカン(写真5)、ナツミカン(写真6)が実を付けています。ボタンの若木が藁で作った雪囲いで守られています(写真7、8)。

閑話休題、『抱擁家族』(小島信夫著、講談社文芸文庫)は、正直言って私の感性にはそぐわない私小説的作品なのに、状況の展開が気になり、最終ページまで一気に読み通してしまいました。

第二次世界大戦後の日本が舞台で、大学講師兼外国文学翻訳家・三輪俊介の妻が、知人の紹介でアメリカ駐留軍キャンプから三輪家に入り込んできた23歳の兵隊・ジョージと一夜の関係を持ってしまうところから物語が幕を開けます。

この密通によって、「家の主人」としての「倫理的支柱」を一挙に奪い去られた俊介が、「家の中をたてなおさなければ」と慌てふためく様が戯画的かつ自虐的に描かれていきます。俊介と、彼より2つ年上の大柄な妻・時子に止まらず、成人しかかっている息子・良一や娘・ノリ子も、自己のあるべき場所を見失って右往左往する有様です。そうこうするうちに、時子が乳がんを発病し、死去に至ります。

妻の死後、俊介の弟子筋に当たる、アメリカ帰りの青年・山岸が三輪家に住み込み、さらに波紋を広げます。この山岸は、師・小島信夫への熱い思いが籠もった『運命の謎』の著者・三浦清宏がモデルのようです。