秘密の親友が犯人にされようとしている、その時、あなたならどうする?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3064)】
不鮮明だがイソヒヨドリの雄(写真1、2)、ダイサギ(写真3、4)、ヒメアカタテハ(写真5)、アゲハ(写真6、7)をカメラに収めました。シュウメイギク(写真8)、センニンソウ(写真9、10)が咲いています。オクラ(写真11、12)が花と実を、ハンカチノキ(写真13、14)が実を付けています。シアノバクテリア(藍藻)が大量増殖した池で青粉(あおこ)が発生しています(写真15、16)。因みに、本日の歩数は11,997でした。
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閑話休題、『名著奇変』(柊サナカ・奥野じゅん・相川英輔・明良悠生・大林利江子・山口優著、飛鳥新社)は、国民的人気がある名作が持つDNAを次世代の小説家が進化させた短篇集と銘打たれています。本書に収められている大林利江子の『せりなを書け』は、太宰治の『走れメロス』のDNAを受け継いでいることになります。
「市立朝比山中学一年三組の教室は、空気がピンと張り詰めたように静かだった」。というのは、向坂先生が、昨晩、校庭のウサギ小屋にいた2羽のメスのウサギを惨殺した生徒を炙り出そうと必死になっているからです。
「『とても残念なことだけど、このクラスの中に犯人がいる可能性が高いの』。・・・『みんなが犯人を教えてくれるまで、今日は終われませんよ』。向坂先生の声がさっきよりも一段と低くなった。だんまりを決めた生徒たちに対し、ついにしびれを切らしたのだ。・・・向坂先生は、『タレコミ用紙』を作り始めた。わら半紙を四等分にカットし、教卓の上で一つにまとめてトントンと揃えると、それをみんなに配りながらこう言った。『どんなことでもいい。ここに犯人について知ってる情報を書きなさい。自分の名前は書かなくていいから』」。
「『手紙、回ってきた』と、美里ちゃんが私の背中越しに囁いた。前を向いたまま、手を後ろに差し出すと、そこにノートの紙切れを四つ折りにしたものが乗せられた。私はそっと膝の上で紙切れを開いてみる。そこには、たった一行の走り書きがあった。『せりなを書け』。・・・その時、全部理解した。クラスで一致団結して、せりなを犯人にしようとしている。せりなは『生贄』に選ばれたのだ。向坂先生の気持ちを押さえて、みんなが早く帰るための生贄。どうしてせりなが選ばれたか? 答えは簡単だ。せりなには無実を主張する力も、味方もいないからだ」。
「私は胸が張り裂けそうになった。せりなは優しくていい子だ。『シークレットフレンドになろう』なんて自分勝手なことを言っても、『それ、素敵だね』と笑ってくれた。私のずるい計算を全部見ないふりしてくれた」。
そこで、「私」が選択した作戦は・・・。
そして、最後の最後に、何と、思いもかけない大どんでん返しが待ち構えているではありませんか。
『走れメロス』は、女々しい太宰にしては珍しい傑作だと私は評価しているが、『せりなを書け』は、DNAはさておき、『走れメロス』に引けを取らない短篇に仕上がっています。