奴隷に生まれ、20歳で逃亡に成功するまでのフレデリック・ダグラスの半生記･･･【情熱的読書人間のないしょ話（2522）】
シロハラ（写真1）、ツグミ（写真2）、ハクセキレイ（写真3）をカメラに収めました。ラナンキュラス・アシアティクス（写真4～8）が咲いています。我が家のキンモクセイにキジバト（写真9）が巣を作り始めました。
閑話休題、『アメリカの奴隷制を生きる――フレデリック・ダグラス自伝』（フレデリック・ダグラス著、樋口映美監修、専修大学文学部歴史学科南北アメリカ史研究会訳、彩流社）では、19世紀にアメリカ・メリーランド州で奴隷として生まれたフレデリック・ダグラス（1818～1895年）が、20歳の時、逃亡に成功するまでの半生が綴られています。
独学で読み書きを覚え、奴隷制廃止論者となったダグラスの行動力は尊敬に値するが、彼の奴隷時代の記述からは、奴隷制の苛酷な実態が生々しく伝わってきます。
「私は度々、夜明けにおばさんの引き裂くような悲鳴で起こされた。主人はよく、おばさんを梁に縛り付けて、そのむき出しの背中を鞭で文字どおり血だらけになるまで打ち続けた。おばさんの悲鳴が大きくなればなるほど、主人はますます酷く鞭打った。血が最も速く流れるところを、最も長いあいだ鞭打った。主人は己が疲れ果てるまで、血のこびりついた牛革の鞭を振るい続けた」。
「ウィンダーが、一人の家内奴隷を鞭の先端がちょうどよく当たる位置に立たせ、一打ごとの痕がその背中に全てみみず腫れとなって隆起するように鞭打ったのを、私はこの目で見た」。
「（15歳か16歳の）少女がすぐに動こうとしないことに気付いたミセス・ヒックは、ベッドから飛び出し、暖炉のそばの樫の木の棒をつかみ取るや、少女の鼻や胸骨を砕き、その命を絶った」。
「ミセス・ハミルトンは部屋の中央にある椅子に座っていて、その横には重い牛革の鞭がいつも置いてあった。それによって一日中、1時間もおかずにどちらかの奴隷が血にまみれていた。（22歳と14歳の）女の子たちは、女主人の前を通る度に『ぐずぐずするな！ 黒いジプシーめ！』と言われ、おまけに牛革の鞭で頭や肩を血が流れ出るほど叩かれていた。女主人はいつも『我慢しろ！ 黒いジプシーめ！ 動かないなら、私が動かしてやる！』と言いながら残酷な鞭打ちをする」。
「私は、主人が足の不自由な少女を縛り上げ、重い牛革の鞭で少女のむきだしの肩を鞭打ち、温かい血がしたたり落ちるのを見た。主人は、この傷ついた少女を4、5時間もこの恐ろしい状態で縛ったまま放置したものである。私は、主人がこの少女を朝の早いうちに縛り上げて朝食前に鞭打ち、そのままにして仕事場に行き、夕食時に戻っては、すでに残酷に打たれて傷つき癒えていない箇所に再び鞭打ったのを知っている」。
「私は（その）主人のもとで生活した9ヵ月のあいだ、全て主人の不当な言いがかりで幾度となく激しく鞭で打たれた。そして主人はついに私を、躾けのために外に貸し出すことに決めたのである」。
「ミスター・コーヴィは、虎のように私に飛びかかり私の服を引き剥がし、枝がぼろぼろになるまで打った。私は、痕がいつまでも残るほどの傷を負った。この鞭打ちは、これと同じような失敗をする度に受けることになる鞭打ちの最初のものであった」。
「キャロラインは、20歳くらいの大柄で丈夫な女性であった。すでに1人の子供を産んでおり、そのことでキャロラインがミスター・コーヴィにとって格好の女（奴隷）であることは証明されていた。ミスター・コーヴィは、その女奴隷を買うと、ミスター・サミュエル・ハリソンという既婚男性を雇い、1年間一緒に過ごさせた。その男を毎夜キャロラインと同じ部屋に閉じ込めたのである。その結果、年末にはその哀れな女は双子を産んだ。ミスター・コーヴィとその妻は喜びのあまり、産褥期のキャロラインのために必要なことは全て行なった。その赤子たちを、二人は追加される財産と見なしていたのである」。
「（牧師の）ミスター・ウィーデンが所有していた奴隷のなかに、名前は忘れたが、女性奴隷がいた。その背中は、無慈悲な信心深い悪党の鞭打ちによって何週間にもわたって実際に皮がむけたままであった」。
いずれも、ダグラス自身が目撃したり体験したりした事例ばかりなので、説得力があります。