榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

社長が「吉田調書」報道を取り消した2014年9月11日は「新聞が死んだ日」・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2689)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年8月27日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2689)

チョウトンボの雄(写真1)、ヤマトシジミの雄と雌(写真2、3の下が雄、上が雌)、キマダラセセリ(写真4~6)、チャバネセセリ(写真7)、イチモンジセセリ(写真8)、トノサマバッタ(写真9)、ショウリョウバッタの緑色型(写真10)、褐色型(写真11)、ショウリョウバッタモドキ(写真12、13)、浮き巣上のカイツブリ(写真14、15)をカメラに収めました。

閑話休題、60年間に亘り朝日新聞を読み続けてきた私にとって、全ての人物が実名で登場するノンフィクション『朝日新聞政治部』(鮫島浩著、講談社)は、見逃すことのできない一冊です。

とりわけ印象深いのは、●朝日新聞の社内抗争の歴史、●「慰安婦記事の取り消し」、「福島原発の吉田昌郎所長の調書問題」、「池上彰のコラム掲載拒否」を契機に、権力の横暴を監視するというマスコミの一番重要な役割を朝日新聞が放棄した経緯、●東京電力の隠蔽体質を暴いた「吉田昌郎所長の調書問題」の当事者である著者・鮫島浩の上層部との闘いぶり――の3つです。

●朝日新聞の社内抗争の歴史
組織内抗争は朝日新聞に限ったことではないが、製薬企業・三共(現・第一三共)の権力の中枢で激しい社内抗争を経験した私には、とても他人事とは思われない生々しさが甦ってきました。実名で綴られている強みが臨場感を増強しているのです。

著者の、「それらを成し遂げるには、会社内における『権力』が必要だった――」という言葉が胸に沁みます。

●福島原発の吉田昌郎所長の調書問題
この問題の当事者の時々刻々の詳細な記録が、朝日新聞が安倍政権という権力に迎合し、忖度し、遂には権力に呑み込まれていく凋落ぶりを雄弁に物語っています。本書のおかげで、当時、感じた朝日新聞の変節ぶりの理由がはっきりしました。

●池上彰のコラム掲載拒否
まずい行動を取ってしまうことは誰にでもあるが、その後の対応策のまずさが、傷をさらに大きく広げてしまうことを示す最悪の事例と言えるでしょう。

上記以外で、個人的に興味を引かれたのは、●著者自身が親しく交わった竹中平蔵の構造改革の功と罪、●小沢一郎が首相になれなかったのは検察の妨害工作が奏功したため――を論じた箇所です。