やは(わ)肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君・・・【ことばのオアシス(58)】
やは(わ)肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
――与謝野晶子
与謝野晶子の初の歌集『みだれ髪』中の、あまりにも名高い一首。「みだれ髪を京の島田にかへ(え)し朝ふしてゐ(い)ませの君ゆりおこす」、「春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳(ち)を手にさぐらせぬ」も、官能的である。
恋愛の自由は言うまでもなく、結婚の自由さえなかった時代にあって、老舗の娘が性愛の悦びを歌い上げた短歌は、当時の人々に衝撃を与えた。そして、安易な性表現が溢れる現在もなお、斬新で水際立った表現はその力を失っていない。晶子は、己の感性を武器に、近代の扉を押し開けた詩人なのである。
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