榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

現在の哲学の主流である相対主義(懐疑主義)哲学に対する異議申し立て書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2793)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年12月9日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2793)

その家の主がシシユズ(オニユズ。写真1)をもぎり、砂糖漬けやマーマレードにして食べられるよと、撮影助手(女房)に手渡してくれました。ロウヤガキ(写真2)が実を付けています。ギョリュウバイ(写真3)、トキワマンサク(写真4)、ランタナ・カマラ(シチヘンゲ。写真5)、サザンカ(写真6)、ポインセチア(写真7)が咲いています。ドウダンツツジ(写真8)、ツタ(写真9)が紅葉しています。

閑話休題、『新・哲学入門』(竹田青嗣著、講談社現代新書)は、現在の哲学の主流である相対主義(懐疑主義)哲学に対する異議申し立て書です。

「哲学は(宗教とは異なり)『物語』を用いず、概念と論理を使用することによって普遍的な『世界説明』をめがける。しかし概念と論理の使用というこの方法が、哲学の大きな弱点となる。つまり、論理(理屈)を駆使して白を黒とも言いふせる詭弁的論法が現われる。ここから、哲学に似た哲学の鬼子、『形而上学』(独断論)や『相対主義』(懐疑主義)哲学が現われるのである」。

「20世紀の哲学の主流となったのは、マルクス主義、分析哲学、そしてポストモダン思想だった。だがこれらはすべて、哲学の普遍洞察の方法を見失い、あるいは投げ捨ててしまった」。

「現代哲学(とくに相対主義哲学)は、近代社会の『原理』と『現実』とを区別できず、普遍洞察の方法を禁じ手にして、いまあるどんな権威や制度も正当性をもたないという、相対的論理による現実批判の方法をとった。しかし、相対主義は一切を批判するが、現実に対抗する論理を生み出すことはできない。なぜなら、それは現実を変える条件を『原理』として見出す方法をもたず、さらに、その論理を徹底するなら、すべては力が決するという『現実論理』に帰着する。そのことで必ず『現実』に屈服するほかないからである」。

「相対主義哲学は、哲学の歴史のなかで、独断論的イデオロギーが人々にとって圧制的となるとき、つねにこれを相対化し批判するという重要な役割を果たしてきた。現代の相対主義哲学もその役割をよく担ったことは認めねばならない。しかし、この相対主義の役割はいまでは無意味なもの、むしろ有害なものになっている。いま哲学は、単なる批判的言説であることを超えて、時代の矛盾を克服するための可能性の原理を見出すという課題に向き合うべきだからだ」。

「哲学は普遍的な世界説明を創り出す試みである。だがそもそも何のために。こう考えねばならない、・・・『普遍暴力の縮減』のために。またそのことによって、すべての人間の共存とエロス的共生の条件を作り出すために、と」。

すなわち、ニーチェ哲学を土台として、「哲学は、いまもう一度、普遍的な『世界説明』の創出の営みとして、普遍洞察の方法として再生されねばならない」と、著者は主張しているのです。

よくぞ、言ってくれたと、相対主義哲学の横行に憤っている私は、本書を手にして快哉を叫んでいます。