愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが絆の形成に必ずしも必要ではないことが分かった・・・【山椒読書論(793)】
【読書クラブ 本好きですか? 2023年5月27日号】
山椒読書論(793)
「日経サイエス 2023年7月号」(日経サイエンス社)の特集「愛情の神経生物学――なぜ浮気をしないのか」(S.フェルプス、Z.ドナルドソン、D.マノ―リ著、北川玲翻訳協力、吉田さちね監修)では、最新の研究結果が紹介されている。
周囲との絆はどのように結ばれるのか、米国中西部に棲息するプレーリーハタネズミの研究から驚くべき新たな洞察がもたらされたというのである。乱交性のアメリカハタネズミとは異なり、プレーリーハタネズミは齧歯類にしては珍しく、パートナーを選び、巣を共有し、共に子育てをする。一夫一婦の絆は生涯続く場合もある。
愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが絆の形成に欠かせないと長らく考えられてきたが、CRISPR-Cas9を用いてオキシトシン受容体をコードする遺伝子を取り除いたプレーリーハタネズミを使った実験で、オキシトシン受容体は絆の形成に必ずしも必要ではないことが分かったのである。
プレーリーハタネズミの研究から、ヒトの絆や愛情に関する研究が進み、さらに理解が深まるだろうと結ばれている。