榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書のおかげで、36年前、プレゼントされた木彫りの鳥の種名が明らかに・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2965)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年5月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2965)

ラミーカミキリ(写真1、2)、ヒメカメノコテントウ(写真3、4)、ウチワヤンマ(写真5)、コシアキトンボの雄(写真6)、未成熟雄(写真7、8)、産卵するシオカラトンボの雌(写真9~11)、アカボシゴマダラの春型(写真12)、ツマグロヒョウモンの雌(写真13)、カルガモの親子(写真14)、エナガ(写真15)をカメラに収めました。

閑話休題、36年前、海外出張から帰国した先輩から土産としてプレゼントされた木彫りの鳥は、現在も私の書斎のデスクに置かれています。水鳥ということは明らかだが、種名までは分からずに過ごしてきました。

今回、『人類を熱狂させた鳥たち――食欲・収集欲・探究欲の1万2000年』(ティム・バークヘッド著、黒沢令子訳、築地書館)を読み始めたところ、何と、口絵にこの木彫りの鳥によく似た鳥の絵が載っているではありませんか。その鳥には、『イギリス鳥類史』に描かれたハシグロアビというキャプションが添えられています。この情報を手がかりに調べたところ、私の木彫りの鳥はハシグロアビによく似た近縁種のハシジロアビと判明しました。

「(ギルバート・)ホワイトは1700年代にハンプシャー州のセルボーンに牧師として40年間在留したが、その折に、この地の動植物について比類ない知識を得て『セルボーンの博物誌』を著し、類似の本を書くように他の人にも促すようになった。ホワイトは、洞察力に優れた現実的な人物であり、『最初の生態学者』『鳥類学の父』とも呼ばれた。・・・1789年1月、ホワイトは、隣人がウォルマーの森を通り抜けている時に、『ヒース(常緑の低木)の中でじたばたしている大きな珍しい鳥を見つけたが、傷ついていなかったので、生きたまま家に持ち帰った』と記している。この不幸な鳥は、本来水辺に生息するはずのハシグロアビだった。ホワイトはこの鳥を調べ、『この鳥のあらゆる部分と比率は、その生活様式に比類なく適合しており、天地創造における神の知恵をこれほどまでに生かした例はない』と記している」。

「エドマンド・セルースは、19世紀の他の鳥類学者と同じように鳥を殺して研究していた。しかし、ちょうと40歳になった1898年6月に、ヨーロッパヨタカのつがいを観察していてある啓示を受けた」。鳥を殺すのは極悪非道でとんでもないことに思えてきたホワイトは、『観察して推論することで得られる喜びは、技や腕前を駆使して(鳥を)手に入れる喜びと比べると、はるかに勝っている。・・・銃を捨てて双眼鏡(オペラグラスなどの原始的な双眼鏡)を持たせてやれば、二度と元に戻ろうとは思わないだろう』と記しています。「博物館の専門家たちは我こそ真の鳥類学者だと考えていたので、セルースを嫌って嘲笑していたが、セルースは鳥への共感を大切にし、世界を変えたのである。バードウォッチングは世界で最も人気のある娯楽の一つとなり、やがて野鳥観察も科学的になり、野鳥の保護にきわめて重要な役割を果たすようになった」。

「エドマンド・セルースはダーウィンを信奉しており、1906年に野生のエリマキシギを観察して、メスが配偶者を選ぶという考えを立証した。ダーウィンを批判する者の多くは、それはありえないと考えていたので、驚くべき証拠となった。セルースは研究成果を熱心に執筆していくうちに、鳥に興味をもつ人々の関心を集めるようになった」。

この本に出会えてよかった!