榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ミレナのカフカ宛ての情熱的な恋の手紙は残っていないが、今、ここに甦る!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3327)】

【読書の森 2024年5月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3327)

コウノトリ(写真1~4)と2羽の雛、アオスジアゲハ(写真5)、モンシロチョウ(写真6)、アカボシゴマダラ(写真7~9)、翅がボロボロのルリタテハ(写真10)、翅がボロボロのキタテハ(写真11)、イチモンジチョウ(写真12、13)、コミスジ(写真14)、サトキマダラヒカゲ(写真15)、ヒメジャノメ(写真16)、ダイミョウセセリ(写真17)、ベニシジミ(写真18、19)をカメラに収めました。

閑話休題、『あなたの迷宮のなかへ――カフカへの失われた愛の手紙』(マリ=フィリップ・ジョンシュレー著、村松潔訳、新潮クレスト・ブックス)は、失われたミレナのカフカ宛ての手紙を甦らせた意欲作です。

ユダヤ人のフランツ・カフカ(36歳)とチェコ人のミレナ・イェセンスカー(23歳)の恋は、1920年にイタリア北部のメラーノに肺結核療養のため滞在していたカフカと、ウィーンのミレナとの間の手紙のやり取りで始まりました。その恋の激しさと、また、それが悲劇的に縺れていくさまについては残されたカフカのミレナ宛ての夥しい数の手紙が証明しています。

二人は頻繁に手紙のやり取りをしたが、実際に会ったのはほんの数回に過ぎませんでした。しかし、情熱的なミレナは人妻であったが、当時、婚約者がいたカフカに身も心も捧げ尽くしたのです。

カフカは、「彼女(ミレナ)は、今まで見たこともない生き生きとした燃える火だ」と評しています。

一方、ミレナは、当時ほとんど無名であったカフカの文学的才能を見抜くと同時に、彼の性格的弱さについても深く理解して、自分が支えになろうとしたのだが、結婚に踏み切ることができず、恋は1年足らずで終わりを告げてしまいます。しかし、ミレナがそれ以後もカフカを愛し続けたことは、1924年6月に40歳で亡くなったカフカに対する彼女の深く胸を打つ追悼文が証明しています。

なお、ミレナは反ファシズム運動の闘士としてゲシュタポに逮捕され、1944年5月に女性強制収容所で死を迎えます。享年47。

この書簡体小説は、焼却されたと推測されているミレナのカフカに宛てた手紙を、ミレナに成り切ったマリ=フィリップ・ジョンシュレーが想像力を駆使して再現したものです。多くの文献類を渉猟して活用しているため、説得力があります。