榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

高鳴る胸の肌をやぶって心臓に直接さわれたらいいのに、と・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3475)】

【僕らは本好き読書隊 2024年10月15日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3475)

アオサギ(写真1)、ヒドリガモ(写真2、3)、ノシメトンボを捕らえたジョロウグモの雌(写真4は背面、写真5は腹面)、ノシメトンボにそろりと近づくハラビロカマキリ(写真6)をカメラに収めました。ホウキギ(別名:ホウキグサ、コキア。写真7)が紅葉しています。ジュズダマ(写真8、9)の実を摘んでいる女性に尋ねたところ、お手玉の中に入れるとのこと。

閑話休題、短歌集『4(よん)』(青松輝著、ナナロク社)で、とりわけ印象深い歌を挙げてみましょう。

●注意力をできるだけ散漫にして よけられない夏がこっちへ来る
●数字しかわからなくなった恋人に好きだよと囁いたなら 4
●チョコレートを舌で転がして そこから 夜が溶け出していく ごめんね
●ベッドルーム 色覚がないから鮫はきみの血の赤さがわからない
●さんてんいちよん、いちごーきゅーにー、ろくごーさんごー、おねがい、耳に、舌でさわって
●しかたなく消毒をして運命はしかたがなくて それが僕たちのすべて
●嘘つきの女の子にはキャンディーを、神秘性の毒のキャンディー
●溢れかえる姫蜂、きみの不確かな顔が発情しているせいで
●自販機の近くに誰かしゃがんでてきっと黄金比の子供たち
●Life is a game.って本当かなあ 世界中たくさんの囚人
●君たちにたしかな終わりが来るまでの空気が透明なら抒情せよ
●すごく好きだったんだけど今はもう興味ない好きな人の脚韻
●僕のさいしょの恋愛詩の対象が、いま、夜の東京にいると思う
●栞紐はながい読書のためだけのあなたは僕だけの世界君主
●エレベーターのなかで飛んだら落ちそうでこわいね僕に幻滅してね
●二十代を死なずに通り抜けるために、あなたは使いはたす 美と醜を
●どれだけひどく泣いたあとでも構わない、夜にあなたをわたしが巣食う
●おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生きてたらはちゃめちゃに光ってる夏の海
●ひどく疲れる作業の予感 1200 24000 みだらな直喩
●トンネルの壁に光で書かれている『アクロイド殺し』の要約は
●次にくる氷河期の下高井戸のアパートで揺れてる洗濯機
●飲んでいた缶を道路に置いていく確信犯的な、運命的な
●家庭環境悪そうだと思ってごめん脳裏で曲技飛行のように言い訳を探した
●私立探偵みたい記憶は挨拶もしないまま早足で去るから
●運命は液体で、街を巡ってはときどき夏の頬を濡らした
●8個ある消火器をきみが片付けるまでをただ待ってる あと6個
●たしかめたら朝には腐っていた梨の痛みの平均律クラヴィーア
●あなたの書いた世界はぜんぜん下手だよ、って、神さまに言付けしておいて
●まぼろしの星月夜あなたは死後のヴィンセント・ファンタジア・ゴッドスピード
●ハヤブサのようにすべてを知りながら友達が振り回す夜の傘
●僕はそのうち死ぬけど読者はマンガから顔をあげて降る雪を見てもよい
●世界観がすごくてすごく疲れたと言いあう 抒情は死ぬほど溢れる
●僕たちは場面と雰囲気に応じてセックスの途中でもことばを使った
●ガスマスクをしたまま僕が想像する口づけの甘ったるい抽象性
●音割れがひどくて頭が割れそうで思春期は2分ちょいで終わった
●うしろ髪を照れてさわったのは僕で、終わってからが思春期だから。
●iPhoneのライトを照らし捜したのは擬作のヴォルフガング・アマデウス
●星の存在 きみと話しているときに僕はこわれるほど高画質
●神はまだ見たことないし、あると思う、あなたが神である可能性
●この夏いちばん可愛い服できみが知る生存の耐えられない被傷性
●結衣ちゃんのつくった結界から出ると夏で 歌っているのは悪魔
●友達へ言っておきたいのはこの星がすでに失くなってしまったこと
●雪の道でわたしが忘れられずにいる運命的なガスライティング
●傷だらけの手首でもっとていねいに僕だけの流線型の歌姫
●吸入器をはずしてきみがはにかんでさよならするこの夜この世界
●高鳴る胸の肌をやぶって心臓に直接さわれたらいいのに、と

目眩く短歌が満載です。